
トラックドライバーへの労働規制が来年4月から強化されます。2024年4月の施行日まで、およそ1年を切りました。
この労働規制は、トラックドライバーの時間外労働に法律で年960時間の上限が課されるというものです。物流業界ではトラックドライバーの労働環境を見直すため、このような労働規制の強化が行われるのですが、ドライバー不足が深刻化していることで、荷物が運べなくなる事態が懸念されています。
この問題について、岸田総理は政府の対策を示す方針を発表しました。話し合いのなか、岸田総理は「近日中に新たな関係閣僚会議を設置、開催し、緊急に取り組む施策を取りまとめる」と述べました。その上で「物流の革新に向け、関係省庁で緊密に連携し、スピード感を持って取り組む」とのことです。
ネット上では「実際は何も変わらないんじゃないの?」「長距離ドライバーの立場がどんどんなくなっていく」「検討するだけだとすぐに2024年が来てしまう」などの意見が寄せられています。
NRI「2030年には全国の約35%の荷物が運べなくなる」
野村総合研究所(NRI)は、トラックドライバー不足の地域別将来推計として、2030年に予想される荷物量などの試算を発表しました。これによると、労働人口が減少するなか、物流クライシス(物流業界が直面している深刻な問題)が指摘されています。
2024年問題が起こり、トラックドライバーの不足がこのまま続くと、2030年には2015年比で全国の約35%の荷物が運べなくなるとのことです。また、東北や四国などの地方部では、その割合が40%を上回ると懸念されており、物流網を維持するためには「料金割り増しや運送頻度低下が生じる恐れがある」と分析しています。
この背景には、単純な労働人口の減少だけでなく、EC市場拡大による荷物量の増加、そして過酷な労働環境により若手のトラックドライバーが不足しているなどの事情があります。
このような状況のなか、物流業界では輸送の効率化が求められており、物流各社は1台で通常の大型トラック2台分の輸送が可能な「ダブル連結トラック」の活用や、トラック輸送から鉄道や船舶に転換する「モーダルシフト」などの導入を加速させています。
また、再配達の多さや荷受け・荷降ろし時の待ち時間の長さなども、トラックドライバーの長時間労働を招く要因となっているため、ヤマト運輸や日本通運はその改善を積極的に進めています。