
厚生労働省の医薬品第1部会にて、妊娠を中絶するための経口薬「飲む中絶薬」が、日本で初めて承認を了承されました。厚生労働省は「薬の有効性、安全性に問題があるという大きな指摘はなかった」という意向を示しています。
海外では、こうした「飲む中絶薬」が65カ国以上で使用されています。しかし、国内において妊娠初期の人工中絶の手段は、管で吸い出す吸引法と、子宮に器具を入れてかき出す掻爬(そうは)法の2つに限られており、世界保健機関であるWHOは「かき出す方法は時代遅れだ」と指摘しています。
この点、日本の医師によると、日本の中絶手術の技術は高く、安全かつ短時間で手術が完了するとのことです。そのため必ずしも飲み薬を必要としてこなかった背景があるとし、これまで申請がされていなかったとされます。
今回承認が了承された薬は、イギリスの製薬会社が2021年12月に承認申請した「メフィーゴパック」という錠剤タイプの薬です。妊娠後63日目までの人が対象で、ホルモンの働きを抑制する「ミフェプリストン」と、子宮の収縮を促す「ミソプロストール」の2つを合わせて服用します。
服用時に腹痛や嘔吐などの症状もみられる
国内の中絶を希望した妊婦を対象にした臨床実験では、120人中93%の人が服用後24時間以内に中絶に至りました。59%の人に下腹部痛や嘔吐などの症状がみられたものの、多くは軽度か中程度だったとされます。
薬を飲めばスッと中絶が完了するわけではなく、腹痛や嘔吐などの症状があらわれるため、服用時にはそれらの症状に自身で対応する必要があります。
なおネット上では、「手術を行うと体の負担になるため、選択肢が増えるのはとても良いこと」「やっと日本でも中絶薬が導入されるのか」「これさえ飲めば大丈夫と思わないでほしいな…」などの意見が見られました。人工中絶における手段の選択肢が増えるとして、「飲む中絶薬」が日本で注目されています。
ミフェプレックス(MIFEPREX)に関しては注意喚起される
以前、厚生労働省の公式サイトにて、日本で未承認の経口妊娠中絶薬「ミフェプレックス」に関する注意喚起が行われました。
この薬は米国などで使用される中絶薬で、ときに手術が必要になる出血などの危険性があるとして、米国食品医薬品局ではインターネットや個人輸入により入手することのないよう、注意喚起が行われているとのことです。
ミフェプレックスの一般名は「ミフェプリストン(MIFEPRISTONE)」で、欧州では「ミフェジン(MIFEGYNE)」、中国では「息隠(米非司酉同片)」、台湾では「保諾(Apano)」の商品名で販売されています。