本人訴訟を経て悟った“本当に幸せになるための生き方”とは?

作家・講演家 宮崎伸治

約60冊の著訳書がある、作家・講演家の宮崎伸治氏。順風満帆な人生を歩んで来たかのように見えても、これまでに幾多ものトラブルに遭遇し、10年以上出版業界から離れていたとのこと。出版業界の改善を願って著した『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)はテレビ、新聞、雑誌、機関誌、ウェブサイトで評判になり、テレビ出演やラジオ出演、講演、著書執筆、コラム連載、翻訳、インタビューの依頼も殺到。出版業界を長く経験した宮崎氏が今、伝えたいことの深層に隠れた真相にせまる。 

複数の言語で原書を読破

ーこれまでの略歴を含めて簡単な自己紹介をお願いします。

1963年、広島県生まれ。東京在住で、作家・講演家をしています。

学歴は、青山学院大学国際政経学部卒、英シェフィールド大学大学院言語学研究科修了。その後、専業の作家・翻訳家となりましたが度々のトラブルに遭遇し、「何かが違う」という思いから完全に断筆し、本当の幸せは何かを探るため学問を志しました。

40歳を過ぎて金沢工業大学大学院工学研究科終了、慶應義塾大学文学部卒、英ロンドン大学哲学部卒および神学部サーティフィケート課程修了、日本大学法学部および商学部卒と勉学に励みました。

ロンドン大学在学中に名著を原書で読む価値に目覚め、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、中国語の原書に挑戦し始めて、この5言語だけでも読破した原書は数百冊に及びます。数年前から「多言語学習」のテーマで講演や執筆を依頼されるようになり、現在、通訳翻訳WEBで「翻訳家が語る! 多言語学習の魅力」というコラムを連載中です。

純粋な日本人でも、努力次第で原書が読破できるようになることを世間の人々に伝えたいというのが今の願いでもあります。

10年以上も出版業界を離れていた理由

ー次々と著訳書を出されていたのにも関わらず、10年以上も業界から離れていた理由や考えを伺えますか?

この世はうたかたのようなものに過ぎず、すべては移り変わります。この世に確かなもの、不変なものなど何ひとつないのです。一見、価値があるように見えるお金、地位、名誉、評判…を手に入れようとあくせくする人が多いですが、こうしたものは「仮象の善」と言われるもので、私たちの幸せを保証してくれるものではありません。

出版業界に身を置き、幾多ものトラブルに遭遇した私はそれを嫌というほど痛感しました。たとえば、出版社からの依頼で10ヶ月かけて仕上げた翻訳書も「売れそうにないから」という理由で出版中止にされたことがあります。

そのとき、それまで信頼していた仕事仲間も皆、手のひらを返しました。弁護士に頼るのもひとつの方法ではありますが、弁護士も人間である以上、自分の利益になりそうにないと思ったらそっぽを向かれる可能性があります。つまり、この世で頼れるものは自分しかないのです。こういうことを経験しなければ、なかなかわからないことだと思います。

ー相当辛い経験だったことと思います。その経験を得て、今、どんなことを伝えたいでしょうか?

私は本人訴訟をしたのですが、たった1人で数人に対峙するのはとても心細いものです。絶対に勝てると確信していても、敗訴する悪夢を何度も見ました。そのときに心の拠り所にしていたのが『新約聖書』でした。

この辛い経験を経て、本当の幸せをつかむには、どうすれば「仮象の善」が手に入るかという指針ではなく、どうすれば「真の善」(誠実さ、正直さ、勇敢さ、忍耐力、節制などの美徳)を身につけられるかという指針で生きることだと確信しました。

そして、それを世の中の人に伝えたいと思い、その方法の一つとして『聖書英語なぞるだけ』(百年書房)を自費出版したのです。

聖書英語なぞるだけ(著:宮崎伸治)

1日1日を大切に生きる

ー今後のビジョンについてお伺いできますか?

ほとんどの人は「自分を喜ばせる」ために生きているように見えます。夢や目標を訊いても、その返答の多くはどうすれば「自分を喜ばせる」ことができるかに関することに過ぎません。社長になりたい、トップセールスマンになりたい、結婚したい、あたたかい家庭を築きたい…。配偶者や子供の幸せを願ったところで、それは「自分を喜ばせる」ことの延長にしかすぎません。

私のプロフィールを見れば、私がベストセラーを出したり、講演家として名声を得たり…といったことを望んでいると思われるかもしれませんが、私にはもはや「自分を喜ばせる」ことに執着してはいません。自分のことは二の次にしてでも、どうすることが「世の中を明るくすること・隣人を喜ばせること」につながるかに全神経を注ぎたいのです。

ーその方法のひとつとして本を出版されたのですね。しかし、なぜ自費出版されたのでしょうか?宮崎さんなら商業出版もできたように思うのですが。

売れるかどうかわからない本を出したがる出版社はありません。この企画も数社に売り込みましたが、売れそうにないという理由ですべて却下されました。私が「自分を喜ばせる」ことに執着する人間であれば、費用が回収できる見込みもないのに自費出版をすることなどなかったでしょう。

しかし、私は苦しみのどん底にあったときに自分を救ってくれた『新約聖書』を“なぞって学ぶ”素晴らしさを伝えたいという思いが断ちきれなかったことから、自費出版に踏み切りました。わかる人だけにわかってもらえばいいと思っていたためです。

ところが、某書店に直取引で販売していただいたところ、その店舗のみで月平均10冊のペースで売れ続けており、「在庫が切れたら10部納入」を繰り返していますが、今や70部も納入するに至っています。

私は「将来、こうなればいいなぁ…」という淡い期待は抱いていません。私にあるのは、どうすることが「世の中を明るくすること・隣人を喜ばせること」につながるかを考え、1日1日を大切に生きたいという思いだけです。

それが著書出版や講演につながればそれはそれでありがたくお受けしたいですが、著書出版や講演だけにこだわるつもりはなく、世の中に必要とされることに対して全力を注入するのみです。

(プロフィール)

作家・講演家 宮崎伸治

約60冊の著訳書があり、著書としての代表作に『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)がある。訳書としての代表作には『7つの習慣 最優先事項』(キングベアー出版)がある。

聖書英語なぞるだけ(著:宮崎伸治)

ひろゆき氏など多くのコメンテーターが出演するAbemaTVにて、翻訳業界の現状を語りました。https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p3575

「大竹まことのゴールデンラジオ」に出演。
http://www.joqr.co.jp/blog/main/2021/03/110.html

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