
ネット証券の大手であるSBI証券と楽天証券は31日、日本株の売買手数料を無料化すると正式にアナウンスしました。この大胆な決定により、両社はそれぞれ1〜2割の収益減少が見込まれます。
業界内では、他の証券会社にとっても手数料の下方圧力が増大し、業界全体の再編が進む可能性が指摘されています。SBI証券は9月30日の注文から、売買手数料を一律でゼロに設定する予定です。
特に現物取引においては、これまでの1注文あたり55〜1,070円の手数料がゼロになることとなります。楽天証券も10月1日の注文から、同様の手数料ゼロを実施する予定です。
SBI証券は、今回の施策を「ゼロ革命」と称しています。日本株を国内の金融商品取引の根幹と位置付け、投資への敷居を大きく下げることで、証券投資の普及を促進する狙いがあります。「今回ばかりは追随しないと思っていた」との声も聞かれる中、楽天証券は上場を目前に控えている楽天証券ホールディングスの株価に影響が出る可能性も考慮しつつ、SBI証券に迅速に対抗しました。
2024年1月から開始される新しい少額投資非課税制度(NISA)の導入に伴い、投資への関心が若年層を中心に高まっています。この手数料の無料化は、特に投資初心者が証券会社を選定する際の大きな要因となるでしょう。
ネット上では、「ユーザーにとっては嬉しいけど、全員対象はやめたほうがいいのでは?」「手数料無料にされると、利益の税金が全額対象になってデメリットが大きすぎる」「この勢いで投資信託の手数料もゼロにしてください」などの意見が寄せられています。
他証券会社の手数料ゼロの方針
マネックス証券は、手数料ゼロの方針には追随しない意向を示しています。同社は、投資家の資産運用をサポートする機能を継続的に提供していく方針です。
一方、松井証券は新NISA口座の米国株取引などの売買手数料を無料にする措置を取り、同時に投信残高の最大1%をポイントとして還元する新サービスを開始します。
米国のネット証券業界では、ペイメント・フォー・オーダーフロー(PFOF)という仕組みが根付いています。この仕組みは、顧客の注文を機関投資家である超高速取引業者(HFT)に提供し、それと交換で報酬を得るというものです。
しかし、日本にはこのような仕組みが存在しないため、手数料の無料化は売上の減少に直接つながる恐れがあります。SBI証券では、無料化による年間減収が約200億円、約1割と予測されています。
「取引システムの使いやすさなどで十分違いを出せている」と自信を持つネット証券の首脳や、「対面でのコンサルティング営業を重視しており、単純な手数料勝負には巻き込まれない」と語る大手証券幹部もいます。今後の証券業界の動向に注目が集まります。