第3回ライティングコンテスト佳作

私は足立区に住んでおよそ1年半が過ぎました。このまちで感じた「好き」を四季にのせて、文章を紡ぎたいと思います。

春は、花畑公園に咲き誇る桜が美しいところが好きです。

花畑公園には約90本のソメイヨシノが立ち並び、お花見を楽しむことができます。澄んだ青空や芝生の緑が、薄ピンクの桜と融合し、春めいた景色が広がります。

暖かな陽の光に包まれて、桜を眺める優しい時間に心が癒されました。上京しひとりぼっちで、故郷を思いながらみた桜の景色は、私にとって特別で一生忘れないものになりました。春風に吹かれて桜が舞い散るとともに、小鳥や蝶が舞う様子は、希望に満ち溢れた新年度を表現しているようでした。

夏は、足立の花火が好きです。

荒川の河川敷で約15,000発の花火が夏夜を包みます。私は花火大会に行ったことがなかったため、豪華絢爛な花火は初めての経験です。大迫力の花火は、まるで大量の宝石を「バンッ」と砕いたように夜空を舞います。小さな花火は、まるで星座が「パッ」と弾けて星が降るように儚く散ります。

可愛く髪を結わえた小花柄の浴衣の女の子と、爽やかな短髪に黒い浴衣の男の子が、時に見つめ合いながら花火を楽しむ様子は、小説のワンシーンのようでした。ひとり、友達、家族と見る花火も鮮やかで美しいけれど、好きな人と一緒に見る花火は、どれほどに綺麗なんだろうかと思い、心がきゅんとしました。

秋は、金木犀が好きです。

足立区内のところどころに金木犀が咲いています。私の通勤路にも金木犀が咲いており、秋のそよ風が甘い香りを運んでくれます。何気ない日常を愛しく思えるようなオレンジの小花とじんわりと染みる甘い香りが、心をそっと癒してくれます。

仕事終わりに夕日とともに家路を急ぐのもいいけれど、時間をかけてゆっくりと金木犀を感じ、心を橙色に染めるのもいいと思いました。夏が終わり冬が来る、秋の切なさを感じることができました。美しい情景を探し求めることが多いですが、いつもの情景の中に美しさを見つけられるような、心を持つことも大切だと思いました。

冬は、光の祭典というイルミネーションが好きです。

竹ノ塚駅から元渕江公園までが色鮮やかにライトアップされます。竹の塚けやき大通りは木々が光を纏い、まるでシャンゼリゼのようです。元渕江公園にある、自然木のイルミネーションツリーは、クリスマスのワクワクを感じさせます。夜を彩る華やかな光の芸術が、ロマンティックです。

「手が冷えてきたから」と手をぎゅっと繋いだり「体が冷えたからホットココア買おうか」と話したり、イルミネーションはふたりの距離を縮める口実を作っていることを知りました。ホットココアを片手に、手を繋ぐふたりの足跡は「今年の冬はあったかいね」と足音をたてました。

私は、就職を機に愛知県から上京しました。22年間のどかな田舎で暮らしていたため、上京したら、四季折々の風景に心動かされることがなくなってしまうのではないか…と、悲しく思っていました。しかし、足立区には四季を楽しめる行事があり、心が満たされています。

足立区からは電車に少し揺られると、高層ビルの立ち並ぶビジネス街やオシャレな街に出ることができ、普段と違う景色に心動かされます。また違う方向へ向かえば、緑豊かな自然を感じることもできます。多種多様な景色に出あい、心に湧いてくる言葉を綴ることが好きな私にとって、東京という凝縮された環境は最高です。今後どんな景色が待っているのか、楽しみで仕方がありません。

思い出を振り返って文章にしたら、思ったよりも美しく心に残っていることに嬉しさを感じました。今後も思い出を丁寧な言葉で紡げるように、自身の心を磨いておこうと思います。だって、私の心は、美しい日本の四季を見るための窓だから。

ライター名:玄蕃莉子

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