
スイス・チューリッヒ工科大学の科学者が、レーザー通信を使った驚異的な実験に成功しました。その内容は、首都ベルンからユングフラウヨッホまで53キロを結んだレーザー通信で、毎秒1テラビット単位のデータ転送に成功したというものです。
欧州光通信会議で発表されたこの実験は、2014年から800億ユーロ(当時で約9兆8,000億円)を投じて実施された全ヨーロッパ規模の研究プロジェクト「Horizon2020」の一環として行われました。
インターネットのバックボーン、つまりインターネットを支える主要なネットワークは、光ファイバーケーブルによって形成されています。大陸間の接続は海底ケーブルを用いて行われており、この海底ケーブルの敷設には多額の費用がかかります。
しかし、テラビット単位のレーザー通信が可能になることで、海底ケーブルを使うよりもコスト効率が良く、かつ高速なバックボーン接続ができるようになると期待されているのです。
この研究が成功した背景には、チューリッヒ工科大学電磁場研究所のヤニク・ホルスト教授の活躍があります。彼は「光データ転送において、ベルン大学ツィマーヴァルト天文台とユングフラウヨッホの高地研究基地を結ぶテストルートは、衛星と地上局を結ぶルートよりも困難があるといえます」と語りました。
レーダー通信とは?データ通信の未来への影響
レーザー通信は、既存の衛星通信と比較しても非常に高速な転送が可能です。また、信号強度の維持のため、直径数十センチの望遠鏡から変調された状態で発信されます。
そして、フランス国立航空宇宙研究所の技術を使用して、光波の位相を毎秒1,500回修正し、信号強度を約500倍に改善する手法が取り入れられました。
チューリッヒ工科大学電磁場研究所長のユルク・ロイトホルト教授も、この進歩について興奮を示しており、「我々のシステムは画期的な進歩です。これまでは、数ギガビットの狭い帯域幅で長距離を接続するか、広い帯域幅の自由空間レーザー通信で数メートルの短距離を接続するかの2つの選択肢しかありませんでした」と述べています。
今回の新システムは、単一波長で毎秒1テラビットを実現可能であり、さらに今後は標準技術を用いて40チャネルにすることで、毎秒40テラビットまで簡単に拡張できるとのことです。今後のデータ通信への影響に期待が高まります。