地球温暖化対策の新たな切り札として、高知県大月町の黒潮生物研究所が注目を集めています。同研究所は、沿岸に自生する海藻「カギケノリ」を陸上養殖し、家畜の飼料として活用するプロジェクトを民間2社と共同で進めているのです。
カギケノリは人の食用には適しませんが、家畜の餌に混ぜることで、げっぷに含まれる温室効果ガス「メタン」を大幅に削減できるとされています。牛や羊は、飼料を消化する過程で胃内の微生物の働きによりメタンを生成し、1日に乳牛で約500リットルものメタンを排出します。
メタンは二酸化炭素の20〜25倍の温室効果があり、人間活動に起因する温室効果ガスの5%を家畜が吐くメタンが占めているとのことです。世界的な人口増加に伴い家畜の需要も高まる中、げっぷのメタン削減は世界的な課題となっています。
カギケノリに含まれる成分が、メタン生成微生物の活動を抑制すると考えられており、海外では飼料に混ぜることでメタンを9割以上削減できたと報告されています。
黒潮生物研究所がWebサイトでカギケノリのメタン削減効果を紹介したことがきっかけとなり、大成ロテック社と日本甜菜製糖社が共同プロジェクトを提案。高知発の画期的な取り組みとして、世界の温暖化対策に貢献することが期待されます。
水温や日照時間の調整により、1ヶ月でカギケノリを最大13倍に
地球温暖化防止に向けた新たな取り組みが、高知県大月町の黒潮生物研究所で始まっています。同研究所の日野出賢二郎氏は、沿岸に自生する海藻「カギケノリ」に着目し、陸上養殖の研究を進めてきました。
2023年5月から基礎研究を開始した日野出賢二郎氏は、水温や日照時間を調整することで、わずか1ヶ月でカギケノリを最大13倍に成長させることに成功。この成果を受け、昨秋からは民間企業2社と共同でプロジェクトを始動させました。
カギケノリを口に含んだ日野出賢二郎氏は、「化学薬品をしみこませたおがくずをかんでいるような不快な気分になり、吐き出した」と語っています。今後、養殖施設の建設やカギケノリの配合割合を変えるなどの実験を行い、2027年の実用化を目指すとしています。
日野出賢二郎氏は「生態系を守りつつ、温暖化防止に貢献したい」と意気込みを述べました。日本甜菜製糖の中井朋一氏も、SDGsが重視される中、温室効果ガス削減に取り組むことで畜産物の市場価値が上がり、農家の誇りにもなると期待を寄せています。
カギケノリ配合飼料の開発は、鹿島建設や鹿児島県山川町漁業協同組合なども目指しており、高知大学も民間企業と共同研究を進めています。2027年の実用化を目標に、日野出賢二郎氏らの挑戦は続きます。