再雇用時の基本給が大幅に減額されることについて、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)が新たな見解を示しました。「基本給のさまざまな性質を検討すべきだ」との判断を示し、前例を打ち破る形となりました。
これまで、二審・名古屋高裁にて「基本給が定年退職時の6割を下回るのは不合理」と判断されていましたが、最高裁はこれを「検討が不十分だ」という理由で破棄。この判決を受け、審理は名古屋高裁へと差し戻されることとなりました。
労働契約法旧20条は、正社員か否かによる「不合理な格差」を禁じており、今回の最高裁の判断はこの法条に基づくもの。最高裁が基本給についての見解を示したのは、今回が初めてです。
訴訟を起こしたのは、名古屋自動車学校の教習指導員であった男性2人です。彼らは60歳で定年退職後、嘱託職員として再雇用されました。同じ仕事内容でありながら、基本給が定年前の約16万円~18万円から約7万円~8万円に大きく減額されたことに疑問を感じ、2016年に会社を提訴しました。
この判決は、再雇用における基本給に関する新たな視点を示し、今後の労働環境改善に一石を投じることになるでしょう。
厚生労働省が公表した高年齢者雇用確保措置について
厚生労働省は高年齢者の雇用に関する最新のデータを公表しました。令和4年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果によると、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は全体の99.9%(235,620社)を占めており、そのうち中小企業、大企業の両方で99.9%の企業が該当します。
継続雇用制度の導入を通じて高年齢者雇用を確保している企業は、全企業の70.6%にあたります。一方、65歳定年制度を導入している企業は全体の22.2%(52,418社)で、そのなかには中小企業の22.8%と大企業の15.3%が含まれます。
さらに、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施している企業は全体の27.9%(65,782社)です。66歳以上まで働ける制度を設けている企業は40.7%(95,994社)、70歳以上まで働ける制度を設けている企業は39.1%(92,118社)となっています。それぞれのカテゴリーにおいて、大企業よりも中小企業のほうが割合が高い傾向にあります。
なお、定年制を廃止している企業は全体の3.9%(9,248社)です。これらのデータから、高年齢者の雇用について企業の取り組みが進んでいることが分かります。
この集計においては、従業員数21人~300人の企業を「中小企業」、301人以上の企業を「大企業」としており、集計対象は全国の常時雇用する労働者が21人以上の企業235,875社です。