WILLER EXPRESSの「新木場BASE」から見える安全に対する徹底した取り組み

WILLER EXPRESS株式会社(ウィラーエクスプレス)の社名看板

お客様に安心・安全な移動サービスを提供するため、長距離バスの安全運行と、乗務員の健康管理などに注力するWILLER EXPRESS株式会社。東京・新木場に設けられた施設「新木場BASE」では、乗務員が寝泊まりできる「宿泊棟」と、ヘルシーな食事を提供する「新木場DINING」も併設されています。

本記事では、安全と快適性の両立を追求するWILLER EXPRESSが、どのように利用者の体験を変えているのか、同社の取り組みに迫ります。

<目次>

WILLER EXPRESS株式会社について

WILLER EXPRESS(ウィラーエクスプレス)の駐車場に並ぶ長距離バス

WILLER EXPRESS株式会社は、2012年9月に設立。快適な長距離バス旅を実現するために、革新的な取り組みを進めています。特に、新木場BASEの開設やFEELythmの導入が、業界内でも注目されています。

前身は株式会社西日本ツアーズで、若い女性に人気が高い高速ツアーバス「WILLER EXPRESS」は、2006年から運行開始しています。女性の隣が女性になる女性専用席のサービスや、寝顔を隠せるカノピーなど、さまざまな革新的なサービスを提供しています。男性が乗る、狭くて暗い高速バスのイメージを一新したバス会社と言っても過言ではありません。

現在、バス事業における営業所は全国に9箇所あります。都市間を結ぶ「高速バス」の他、空港への移動を快適にする「空港シャトル」や、食と観光が融合した日本初のサービス「レストランバス」など、業界の既成概念にとらわれず、新たな価値を創造しています。

乗務員の健康を支えている施設「新木場BASE」

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にあるバスの運転手などが宿泊や食事できる施設「新木場BASE」の建物

長距離バスでは、運転開始してから4時間以内に30分以上の休憩が義務付けられています。夜行バスのように500kmほど移動するような長距離バスでは2人体制で運行されており、1人が運転している間にもう1人が休憩をとることができます。

また、乗務員の健康を支えていくために、WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所には、「新木場BASE」という施設が併設されています。「新木場BASE」には乗務員が宿泊できる宿泊棟と、「新木場DINING」という食堂が完備されています。

距離バス乗務員の睡眠を確保する宿泊施設

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所に隣接する宿泊棟は、主に地方から来た乗務員が利用する施設です。乗務員は無料で宿泊することができ、合計80室ある宿泊棟は、毎日ほぼ満室となるほどです。

宿泊棟ができる前は、乗務員は新木場駅から東京や千葉方面へ1〜2時間離れたホテルに移動して宿泊していたようです。この宿泊棟のおかげで、移動時間がゼロのため乗務員は十分な休息と睡眠時間を確保できるようになり、バスの安全運転にも寄与しています。電車の時間や遅延を気にする必要がなくなったため、ストレスの軽減や健康の向上にもつながっています。

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」の宿泊棟にあるキーボックス
鍵が入ったキーボックス

宿泊棟はオートロックになっており、セキュリティも万全です。乗務員は、運転してきたバスに関連するキーボックスから部屋の鍵を取り、自分の部屋へ向かいます。

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」の宿泊棟にあるシャワー室
シャワールーム

シャワールームは10室あり、シャンプーやリンスなどのアメニティが備え付けられています。タオルも利用できるため、手ぶらで宿泊できるのは乗務員にとって便利なサービスです。

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」の宿泊棟にある浴室
浴室

浴槽が備わった浴室も3室あり、乗務員はゆっくりとお湯に浸かることができます。

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」の宿泊棟にあるシャワールーム
シャワールーム

宿泊棟が満室になっても、シャワールームと浴室は十分な数があります。女性乗務員のために、女性専用エリアに女性専用の部屋やシャワールーム、談話室なども用意されています。

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」の宿泊棟にあるリネン室
リネン室

宿泊者は各自、リネン室からベッドカバーなど必要なものを取って自身でベッドメイキングして部屋を利用します。

WILLER-EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」の宿泊棟にある宿泊部屋.j
宿泊部屋

部屋にはシングルベッド、机、冷蔵庫、テレビがあり、快適な空間が整っています。また、空調は一室ごとにエアコンが備え付けられているので、一年中過ごしやすいです。

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」の宿泊棟にある宿泊部屋の家具や家電
WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」の宿泊棟にある宿泊部屋のハンガーと窓

宿泊で利用した後は、入室前の状態に戻して退室します。清掃業者が毎日、宿泊室やシャワールームなどの清掃を行っており、気持ちよく利用できる環境が整っています。

ヘルシーで栄養価のある食事を提供する「新木場DINING」

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」でヘルシーで栄養価のある食事を提供する「新木場DINING」の内観

食堂の営業時間は8時半〜21時のため、昼行便や夜行便の乗務員も利用しやすい時間帯に設定されています。

食堂が提供する食事は、カロリー控えめで栄養価の高いメニューが中心です。昔は、コンビニなどでカロリーが高めの食事をしている方がほとんどでしたが、バランスのとれた食事によって、健康的になった方が増えたといいます。

WILLER EXPRESS株式会社では、年2回の健康診断結果が良好な社員に対してボーナスを支給する健康キャンペーンを実施しています。このキャンペーンは、乗務員の健康管理意識を高め、健康に起因する事故の減少に貢献しています。健康診断の前には、新木場BASE周辺でランニングする乗務員が増え、仕事前にシャワーでリフレッシュする習慣も広がっています。

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」でヘルシーで栄養価のある食事を提供する「新木場DINING」のメニュー表(1週間分)
メニュー表

定食、麺類、丼ものなどが日替わりで提供されているので、毎日食堂に来ても飽きることなく食事を楽しむことができます。ちなみに、乗務員に食事制限などはありませんが、食べ過ぎないようにということは伝えられているそうです。

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」でヘルシーで栄養価のある食事を提供する「新木場DINING」に設置された食券の券売機
券売機

ほとんどのメニューが500円以内というとてもリーズナブルな値段で提供されています。ヘルシーメニューは500kcal台に抑えられています。

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」でヘルシーで栄養価のある食事を提供する「新木場DINING」に設置されたキャッシュレス決済の案内
キャッシュレス決済の案内

PayPayやLINE Payなどのキャッシュレス決済も導入されており、利用しやすい環境が整っています。

WILLER EXPRESS株式会社の東京営業所にある「新木場BASE」でヘルシーで栄養価のある食事を提供する「新木場DINING」に貼られていたラーメンフェアの広告
ラーメンフェア

社員により食事を楽しんでもらえるように、定期的にラーメンフェアなどのイベントも開催されています。社長も食堂を利用することがあり、社員と直接コミュニケーションをとる機会にもなっています。

運転中の眠気検知機器「FEELythm」の導入

WILLER EXPRESS株式会社で安全のために運転手が使用している運転中の眠気検知機器「FEELythm」(富士通製)
FEELythm

FEELythmは富士通製で独自に開発された眠気検知機器で、乗務員の眠気の予兆を検知できます。耳に装着すると、車内にある機器とBluetoothで接続され、乗務員の脈波を計測して眠気や体調の変化を振動で知らせます。個人ごとに脈波のデータを管理し、脈波が閾値に近づくと振動が起こります。

FEELythmのデータはリアルタイムでクラウドにアップロードされ、運行管理者にも共有されます。これにより、運行管理者は運転操作の異常や眠気の検知時に、早めに休憩を促すことができます。また、ドライブレコーダーや車内カメラを通じて、乗務員の様子を常時確認することができます。

WILLER EXPRESS株式会社・東京営業所の様子
東京営業所の様子

急ブレーキや急発進など不安全動作が検知されると、運行管理者へアラートが通知されます。営業所ごとに監視を行いながら他営業所のバスのアラートも把握できるため、全国の営業所でのダブルチェックにより、安全管理を徹底しています。会話では伝わりきらない現地の状況を、カメラを通じて把握できるようになっていることも安全の配慮です。

運行管理者は国家資格を持ち、資格取得者の配置が義務付けられています。乗務員の健康や、運行状態を把握して安全運行を実現します。運行管理者が24時間体制で営業所に構え、乗務員だけでなく運行管理者と協働して安全運行に注力しています。

バス出発後は乗務員に任せきりではなく、出発後も乗務員の動向を常時把握し、いかに安全基準を高められているかがポイントです。

長距離バスの仮眠室に潜入!

高速バス「WILLER EXPRESS」の車内後方にある仮眠室

長距離バスの乗務員にとって重要なのが、適切な休息です。そのため、一部の長距離バスには仮眠室が設置されており、高速バス「WILLER EXPRESS」では車内後方にあります。

高速バス「WILLER EXPRESS」の車内後方にある仮眠室の内部

仮眠室はカプセルホテルのようなコンパクトな空間で、短時間の休息に適しています。基本的に、バスの進行方向と垂直の向きで配置されています。

高速バス「WILLER EXPRESS」の車内後方にある仮眠室の電話や読書灯などの設備

受話器を使って運転手と連絡を取ることが可能です。小さな読書灯と蛍光灯があるので明るさとしては十分です。コンセントも備えられているのでスマホの充電ができます。

高速バス「WILLER EXPRESS」の車内後方にある仮眠室のベッドやドリンクホルダー

壁際にはスマホなどを入れられそうな網状ポケットと、ドリンクホルダーが備え付けられています。

高速バス「WILLER EXPRESS」の車内後方にある仮眠室の入口
車内後方にある仮眠室

パーキングエリアなどの休憩タイミングで、運転する乗務員と仮眠室で休憩をとる乗務員の交代が行われます。法令に基づいて休憩をしっかりとることで、長距離バスの安全な運行が保たれています。

WILLER EXPRESSが誇るオリジナルシート

WILLER EXPRESS株式会社は、お客様と従業員のフィードバックを基に、独自に開発された快適なバスシートを提供しています。

各シートの背もたれ、座面、腰の部分には異なる厚みと柔らかさのクッションを採用していたり、降車ボタンにはコーポレートカラーのピンクを使用しているなど、細部にわたるこだわりが感じられます。

リラックス

WILLER EXPRESSの長距離バスの4列シート「リラックス」の車内(写真提供:WILLER EXPRESS)
リラックス(写真提供:WILLER EXPRESS)

4列シート「リラックス」は、すっぴんや寝顔を見られたくないというお客様の声から生まれました。カノピーと呼ばれるフードが全席についており、下ろすことで顔を覆い隠すことができます。また、USBポートまたはコンセント、ヘッドレスト、レッグレストがすべてのシートに備わっています。

プライム

WILLER EXPRESSの長距離バスの4列シート「プライム」の車内(写真提供:WILLER EXPRESS)
プライム(写真提供:WILLER EXPRESS)

昨年導入された4列シート「プライム」は「リラックス」に比べて、より大きなカノピーと、隣り合う座席の間に高さ調節可能なパーテーションを備えています。カノピーの内側にはスマホホルダーがついているので、手ぶらでスマホの映像を見ることも可能です。光漏れしにくいカノピー素材と青色の間接照明によって、夜間の移動中もスマホ画面の明るさが他の人へ迷惑をかけることもありません。

コモド

WILLER EXPRESSの長距離バスの3列独立シート「コモド」の車内(写真提供:WILLER EXPRESS)
コモド(写真提供:WILLER EXPRESS)

3列独立シートの「コモド」は、MYカーテンを閉めることでプライベート空間を確保できます。リクライニングの最大傾斜が約140度と、「リラックス」や「プライム」よりも10度ほどゆったり倒すことができます。バスケット型のヘッドレストで、首や頭をサポートします。

ラクシア

WILLER EXPRESSの長距離バスの3列どくりつシート「ラクシア」の車内(写真提供:WILLER EXPRESS)
ラクシア(写真提供:WILLER EXPRESS)

3列独立シートの「ラクシア」は、まるでリビングにいるかのような木目調の床や落ち着いた色合いのシートが特徴です。座席自体が前にスライドする「電動ゆりかごリクライニング」機能を備えています。荷物置きも、3列分が用意されていることも繊細なこだわりです。

ドーム

WILLER EXPRESSの長距離バスの3列独立シート「ドーム」の車内(写真提供:WILLER EXPRESS)
ドーム(写真提供:WILLER EXPRESS)

昨年導入した新3列シート「ドーム」は、シェル型のシート構造でリクライニングしても後ろの乗客を気にする必要がない構造になっています。カノピーも非常に大きく、ゆったりしたプライベート空間を過ごせます。

リボーン

WILLER EXPRESSの長距離バスの3列シート「リボーン」の車内(写真提供:WILLER EXPRESS)
リボーン(写真提供:WILLER EXPRESS)

3列シート「リボーン」は、バスの座席数を18席(WILLERの4列シートは40席、一部車両除く)に絞り、ゆとりある空間を創出しています。「電動ゆりかごリクライニング」機能を備えており、約150度までリクライニングできるため、フルフラットに近い寝心地を感じられます。ビジネスマンの間で、ホテルに宿泊する代わりにこのシートでゆったりと休む人が増えているといいます。

高速バス「WILLER EXPRESS」のこだわり

WILLER EXPRESS株式会社のバスには、乗客の快適さを向上させる「おたすけDM」という非常に画期的なサービスがあります。このサービスは乗客の声に基づいて開発されました。

乗務員が空調の調整などについてアナウンスしていますが、窓側の席に座った場合は通路側に座っている方がいるため、乗務員への伝達が難しくなることがあります。さらに、走行中に立ち上がることは危険であり、すぐに伝えることができないこともあります。

このような場合に役立つのが「おたすけDM」です。バス予約受付確認書メールに記載しているURLまたは、すべての座席の網ポケットの案内にあるQRコードをスマホで読み込むことで、乗客はコメントを送信することができます。このコメントは営業所の運行管理者に届き、遠隔地から乗務員に伝達され、内容によって乗務員が対応します。

他にも、バスの清掃担当者の声を元に、清掃しやすいシート素材への変更や、利便性向上のためのシート改良など、さまざまなフィードバックが社内で収集され、バス運行の改善に活かされています。これらの取り組みにより、WILLER EXPRESS株式会社はより良いサービスを提供しています。

高い安全基準を誇るWILLER EXPRESS株式会社

このようにWILLER EXPRESS株式会社では、最先端技術を取り入れたり、改善点をブラッシュアップして、長距離バスの安全運行と乗客の快適性向上に全力を注いでいます。業界を問わず、同社の安全対策への取り組みを学ぶ企業が増えているそうで、その高い安全意識が伺えます。

代表の平山幸司氏は、「お客様の安全に向けて共に取り組み、業界を盛り上げていきましょう」と呼びかけており、社内では定期的に会議を行い、社長の思いや大切にしていることを社員に伝え続けています。このような日々のコミュニケーションが、WILLER EXPRESSの高い安全基準を支えているのです。

WILLER EXPRESS株式会社の社屋と長距離バス

取材協力
WILLER EXPRESS株式会社
https://www.willerexpress.co.jp

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