映画を10分程度に編集した「ファスト映画」を無断で投稿されたとして、東宝や日活など映像大手13社が男女3人に対し、損害賠償計5億円を求める訴訟を起こしていました。この件について、東京地裁は8月24日に所在が不明であった男1人に対し、請求通り計5億円の賠償を命じる判決を下しました。
一般社団法人「コンテンツ海外流通促進機構(CODA)」が明らかにしました。東京地裁は2022年11月、所在が特定できていた2人に対して、原告の主張を全面的に認めた同様の判決を下しています。今回の1件で、賠償命令は全員に適用される形となりました。
事件の経緯として、所在不明だった1人については、海外に出国して訴状の送達が難しい状況でした。このため原告側は2023年5月に、所在が不明な状態でも訴状が到達したものと認定される「公示送達」を申し立てています。
今回の判決に対して、CODAは「海外に滞在していると思われる所在不明者であっても、逃げ得は許さないという機運の醸成の一助となるものと期待しています」と語っています。その上で「一連の判決は、ファスト映画による権利者への損害額を明確に認定することで著作権侵害への大きな抑止力となる、大変画期的な判決であると受け止めております」とコメントしました。
CODAの代表理事「やり得は許さない」
2022年、「ファスト映画」による損害賠償請求が行われたことで、CODAによる記者会見が開かれました。CODAの後藤健郎代表理事は記者会見で、「著作権侵害に対する大きな抑止力になる判決で、損害額が1回の再生につき200円と認められたことは、今後の対策に大きく資する」とした上で、「『やり得は許さない』という映画関係者のきぜんとした態度の結果だと思う」と話しています。
さらに、映画や動画の不正な再生に対する意識改革の必要性を訴え、「動画を見た人は軽い気持ちだったと思うが、動画を見ることで著作権を侵害する側の広告収入を手助けすることになる。『ファスト映画』は見ないという認識を持ってもらうことが必要だ」と強調しました。
一連の裁判で原告は、損害賠償の計算根拠として、YouTubeの映画の一時ストリーミング視聴の価格が400円を下らないこと、またプラットフォーム手数料を差し引き、その金額は1再生あたり200円を下らないこととしました。不正アップロードされた13社の54作品の視聴回数が約1千万回だったことから、これを基に損害額は約20億円と算定し、最低5億円の支払いを求めていました。