生成AIと認知症介護:皆がフリーに幸せになる時代を目指せるか

第4回ライティングコンテスト優秀賞

認知症についての様々な研究がされてきている。
その予防法や治療法は一般的に知られるようになってきてはいるものの、現時点では、完治することのない病であることには間違いない。長生きする人口が多くなるにつれ、当然認知症患者も増えてゆく。幸いなことにそんな介護業界にもすでに生成AIは導入されており、これからもっと進化を遂げて行く必要がある。

私は姑の介護を経験した際、自分もいつしか他人に迷惑をかけるかもしれないという事が常に頭の片隅にあった。私は外国人として、その当時海外で生活をしていた。「認知症になると、外国語がわからなくなる」という都市伝説を耳にしたこともあり、日本に戻ろうかと考えたこともあった。しかし生成AIにより、どの人種も、どの国にいようと、自国の言葉での介護を受けられる時代が来る。莫大な費用がかかるのが介護の最大の悩みだが、必要なサービスをケータイにて必要に応じてオーダーメードできる世の中になれば、あえて施設に行かなくても介護が楽になる情報と知恵、手助けが簡単に手に入る。

食事に関しては安い材料費でおいしくて栄養価の高いものを調理し、適度な温度で食べてもらうこともできる。作りすぎたらコミュニティーでお裾分けすれば良い。そのコミュニティーも自分から探しに行かずとも、AIに探してもらえる時が来る。誰も一人ぼっちにならなくて済む。時代はどんどんボーダーレスとなり、情報を提供し提供されることで、私たちは一緒に生き延びてゆくことができる。全てにおいて決して手抜きしているわけではない。効率が良いことが後にも先にも一番で、また年齢関係なく恩恵が受けられることも重要だ。年功序列なんて関係ない。皆が精神的に安定しており、自由と安心を感じることができる社会を作るのがゴールなのだ。

しかしながら生成AIとのコミュニケーションにおいては、それら「オートメーション化」が進むにつれ、極めて人間的な部分が抑制されたりしないかを心配する声もある。好奇心とか探究心、愛とか人情とかいった、とても大事なものが抑圧されてしまわないようなルール作りも急がれる。

しかし一方で、認知症患者の数はものすごいペースで増えてゆく。人手はますます足りなくなるし、感情論に傾きすぎるのは得策ではない。厳格なルールの枠組み内のみにおいては、もっと介護はむしろオートメーション化して行くべきだと私は考える。

例えば家族が認知症になった場合、認知症の検査に連れていくために説得することが非常にハードルが高かったりする。尊厳を傷つけないよう、ものすごく気を使う。そのために治療が遅れ、後の医療費も膨れ上がる。この場合、普段通院するクリニックの協力を得て、60歳以上は必ず(認知症用だとわからないような)認知症の問診票を提出する義務のようなものを設けたらどうだろうか。

そのデータベースに全国から認知症を治療する医師のみがアクセス、AIも含めて情報共有できるようなシステムを作り、医師が地方自治体を通して「推薦状」を送る。患者は第三者によって説得されるため、家族間で必要以上に揉めなくて済む。適切な診断と治療を早く開始できるし、ヤングケアラーを減らし、介護のために離職する人をも救う。

自治体にある認知症専門窓口は医師、家族との連携が取れる。必要に応じて周りが動員され、様々な予測されるトラブルに事前に対応することができる。家族の庭仕事を手伝う庭師、在宅の患者相手にご飯を作るビジネスをする栄養士など、経済が回り、地元も潤う。デジタルにより、人と人とのマッチングが進化する。

ノウハウを集めれば集めるほど、人間自身も経験値が上がるから、他の患者さんを助けてあげたいと思う人も出てくるかもしれない。家庭の問題を社会の問題にし、AIがその窓口となることで、生まれる利点もたくさんあるのだ。誰かの犠牲になる人生を降りることも、可能になる。

よく「一番苦しんでいるのは認知症患者である」と言う。しかしそうした良心によって必要以上に苦しめられ、我慢を強いられてきた人を私は多く知っている。会社内で認知症患者に犯罪者に仕立てられ、その嘘によって社会的信用を失った友人もいた。家庭内同様、現在の社会ではどうすることもできない。

精神に問題を抱える人たちと同様、「社会的弱者」に対して何かアクションを起こしたり、物を申したりすることはほぼタブーだ。彼らが「社会的弱者である」という思い込みを今一度外し、尊厳を持った社会の一員なんだと対等に捉えることも、これからの多様性時代は必要なのだと感じてはだめだろうか?

理解やエンパシーは持ちつつも、介護には今一度超合理性が必要かもしれない。一人で全てを背負うような生き方はもう時代遅れだ。頼れるものがあるならば頼った方がいい。心理的余裕が生まれ、その分他人に優しくできればそれでいい。きっと合理的なものを突き詰めたその先に、実は極めて人間的なものを欲した時に、また新たなアイディアを構築してゆけばそれでいいのではないだろうか。

ライター:キュンメル齋藤めぐみ(海外書き人クラブ)

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