東宝は11日、海外でのビジネス拡大を目指し、米国の映画スタジオに2億2,500万ドル(約330億円)を出資すると発表しました。東宝の海外企業への出資額としては過去最高となります。
同社は実写映画やドラマの製作を米国で行う計画を持ち、国内市場の成長が鈍化する中、海外市場への進出を加速しています。全米で好調だった「ゴジラ-1.0」では、実写邦画の興行収入の記録を更新するなどの成果も出ています。
東宝は米カリフォルニア州に本社を置く「CJ ENM FIFTH SEASON」に出資し、株式の25%を取得することで持ち分法適用会社とします。FIFTH社は2017年に独立系スタジオとして設立され、2022年には韓国のエンターテイメント企業CJ ENMの子会社となりました。
この提携により、東宝はCJグループのノウハウを活用し、実写映画やドラマでの米国事業を拡大する予定です。また、Netflixなどのプラットフォームでの配信や、コンテンツのリメーク、相互利用も検討しています。
2022年に公表した中期経営計画では、海外市場へのコンテンツ展開を目指しており、「ゴジラ-1.0」のヒットはその方針を裏付ける成果と言えるでしょう。
「ゴジラ-1.0」は外国語映画として今年最大のオープニング興行収入
米映画情報サイト「ボックス・オフィス・モジョ」によると、映画「ゴジラ-1.0」の公開後最初の週末(1〜3日)の興行収入は北米で3位でした。また、米経済誌フォーブスによれば、同時点で外国語映画として今年最大のオープニング興行収入を記録し、実写邦画として34年ぶりに最高記録を更新しました。
これまでの世界興行収入(約5,200万ドル)のうち約半分は北米であり、北米での高い人気が表面化しています。東宝は製作から流通、興行に至るまでの過程で国内では強い影響力を持ち、スタジオジブリ作品や「名探偵コナン」シリーズのような人気作品を制作面で手がけています。
同社が配給した映画のシェア率は興行収入ベースで約30%を記録していますが、動画配信サービスの台頭と国内市場の成長限界を受け、海外市場への拡大が東宝の新たな挑戦となっています。業界団体の日本映画製作者連盟によれば、過去20年でスクリーン数は1,000程度増加したものの、興行収入は1割しか増えていないとのことです。
今回の米映画スタジオへの投資は、東宝が国内外での成長を目指す戦略の一環として位置づけられており、その成否が今後の同社の成長を占う重要な試金石になると言えるでしょう。