第4回ライティングコンテスト佳作

ーー20××年。
人間の手で行っていた仕事や家事は、AIで行うのが当たり前になった。
そんな時代の、孫娘とばぁばの会話ーー

「ばぁば、学校の宿題なの。AIがなかった時代のことを教えて?」
「いいですよ。あなたには信じられないことが多いかもしれないけれど……昔はね、自分で文章や画像を作っていたの」
「え!本当に?手書きで書いていたの?」
「そこまでアナログではないけれど、ばぁばの若いころは、パソコンやスマホというものがあって、自分で考えたものを書いたり作ったりしていたの」
「信じられない!その時代は大変だったんだね。もっとそのことを聞かせて?」

「今は生成AIに指示を出せば、数秒で何万文字もの文章を書いたりできるし、逆に長文などを400文字に要約してって指示するだけで文章が完成するでしょう?」
「うんうん、そうだね」
「画像や映像だって作ってほしいイメージをAIに伝えると、一瞬でできちゃうでしょ?」
「もちろんだよ!もしかして昔は手入力でそれを作っていたの?ものすごい時間がかかっていたんだろうね」
「そうね。時間はかかっていた。その時間を使って働く分、お金がもらえる仕組みがあったの」

「お金って博物館で見たことがある!紙に印刷されたお札やコインっていうものを使っていたんでしょう?」
「そうそう、懐かしいわね。今は電子マネーでやりとりをするけれど、昔はお財布というものにお金を入れて、お店に行って買い物をしていたの」
「うわぁ〜お金でやりとりしていたころは、不便だったんだね」
「そうね。今の当たり前が、昔の当たり前ではなかったの」

「他にはどんなことが今と違うの?」
「例えば……学校には毎日通っていたわ」
「え?毎日?オンラインでどこでも好きな時に勉強ができるのに?」
「そう、昔は学校に行って勉強するのが当たり前だったの。教室には先生がいて、黒板と呼ばれる壁板にチョークというもので書いて授業をして、生徒はそれを見てノートや鉛筆などを使って書き写していたの」
「手書きで?そんな非効率な勉強方法って信じられない!」
「ふふっ、手書きが当たり前の時代もあったのよ。その後、一人一台タブレットやパソコンが支給されて、少しずつICT学習が取り入れられてきたわね」
「紙を使って勉強していた時代は、資源もムダにしていたんだね」
「今から考えると無駄に感じるものが多いかもしれないわね。でもね、手を使って創作する楽しさもあったのよ」

「ばぁばはアンティークな技法の手芸が好きだもんね。私はなんでもAIに指示して作っちゃうけど」
「そうね。今は洋服でも建物でも読み物でも、AIでなんでも作れるけれど……私は手仕事も大好きよ。ほら、ばぁばが刺繍で作ったバッグを見て」
「わぁ〜スゴイ!私の友達に見せるときっと驚くよ!手で作れるんだって!」

「AIがなかったころは、手で作るのが当たり前だったのよ」
「もしかして、食べ物も手で作っていたの?」
「えぇ。野菜も畑という場所で、農家と呼ばれる人たちが土を使って育てていたの」
「土で?野菜は工場でAIが栽培するものだと思ってた」

「昔は毎日の食事も手で作っていたわね」
「食事も?信じられない。今は食材を入れてメニューを選ぶだけで、自動で調理できるのに。もしかして……昔は、掃除も手作業でやっていたの?」
「そのとおり。ばぁばが子どものころに、ロボット掃除機も登場したけれど……学校では、ほうきや雑巾と呼ばれるもので、床や壁をお掃除していたわ」

「私、今の時代に生まれて良かった!掃除や料理に時間を取られるなんて絶対にヤダ!」
「あなたはそう思うかもしれないけれど……それはそれで、いい時代だったのよ」

ばぁばはそう言いながら窓の外を眺めた。
道路を走る車は自動操縦が当たり前になり、交通事故はなくなった。

人間はAIに頼った生活をするにつれ、体が発達しなくてもよくなり、だんだんコンパクトな体型になっていった。
人間が小さくなることで、地球の限られた資源も枯渇しないで済んだ。
AIの登場で貧困や教育格差、少子高齢化の問題もすべて解決した。

外を眺めていたばぁばは、話をしていた孫娘に視線を戻した。
孫娘は、ばぁばの手の平に乗るほどの、小人のような大きさなのだ。

(これは進化なのかしら?それとも……退化なのかしら?)

ばぁばは小さな孫娘を見つめながら、心の中でつぶやいた。

ライター:ラヴィ

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