米連邦預金保険公社(FDIC)は10日、カリフォルニア州に拠点を置くシリコンバレー銀行が経営破綻したことを発表しました。2022年12月時点での総資産は約2,090億ドル(約28兆2,000億円)で、総預金は1,754億ドルにまでおよびます。
銀行の経営破綻としては、2008年のリーマン・ショック時に起きたワシントン・ミューチュアル(総資産3,070億ドル)の破綻に次ぐ規模だとされています。
米ニューヨーク・タイムズによれば、シリコンバレー銀行は主力の融資先であるシリコンバレーの新興企業に高い金利を提示し、預金を集めて米国債などに振り分け運用益を得ていました。しかし、2022年3月からインフレ抑制のため米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを急速に始め、長期金利の上昇に伴い保有国債の価値が大幅に落ち込み、含み損を抱える形となったとのことです。
また、金融引き締めの影響で、経営状況が悪化した取引先企業から預金の解約申し込みが相次いだため、シリコンバレー銀行は保有資産の売却を余儀なくされ、大きな損失を抱えてしまったとされます。
シリコンバレー銀行の経営破綻の影響を受け、12日にはニューヨークに拠点を置くシグネチャー銀行も破綻しました。ニューヨーク州当局によると、2022年末時点でシグネチャー銀行の総資産は約1,103億6,000万ドルで、総預金は885億9,000万ドルでした。
銀行の経営破綻を受け、米政府が両行の預金の全額保護を表明
米政府は12日、シリコンバレー銀行とシグネチャー銀行の経営破綻を受け、信用不安が金融システム全体に広がるのを警戒し、共同声明で両行の預金の全額保護を表明しました。
FDICは原則、経営破綻しても1口座あたり25万ドルまでしか預金が保護されません。今回の件では、多くの企業が25万ドル以上の金額を預けていたことから、全預金の9割近くが保護されない計算でした。
しかし、米財務省などは「金融システムに対する信頼の強化を通じて、米経済を守る断固とした行動をとる」と語りました。またバイデン大統領は「銀行システムは安全であり、預金も安全なので、国民は安心してください。我々は必要なことは何でもすると断言する」とコメント。
それに加え、「銀行の経営陣には全容を明らかにさせて責任を取らせる」と強調しました。政府の表明からわかる通り、預金に関しては米政府によって全額保護される予定ですが、その一方でシリコンバレー銀行らの株主、経営陣、銀行に対して債権を持つ企業については、泣き寝入りとなる可能性が高いと言えます。