東証プライム市場からスタンダード市場に移行する降格ラッシュが相次いでいます。その背景には、「特例」という選択肢が関係しています。
2023年3月、スマホゲーム開発を手掛ける株式会社マイネットは、「スタンダード市場上場の選択申請の決定に関するお知らせ」として、東証プライム市場上場からスタンダード市場に移行することを表明しました。
マイネットをはじめとした、4月末時点でスタンダード市場に移行する企業は以下の通りです。いずれの企業も、プライム市場の要件である「流通株式時価総額100億円」を満たしていません。
- マイネット
- ODKソリューションズ
- ダイセキ環境
- ソリューション
- 岩崎通信機
- IKホールディングス
- サーバーワークス
- エスクロー・エージェント・ジャパン
- JNSホールディングス
- サインポスト
各社は旧東証1部からプライム市場に移行するにあたり、東京証券取引所の指示で流通株式時価総額を引き上げる計画をしていました。しかし、業績不振や株価低迷によって目処が立たず、およそ1年で撤回を余儀なくされました。
スタンダード市場に自ら降格する理由
プライム市場は3つの市場区分のなかで最も上場基準が厳しく、高い流動性やガバナンス、安定的な経営成績などが求められます。しかし、旧東証1部から横滑りでプライム市場に入った企業のうち、296社はプライム市場が定める上場維持基準を下回っていました。
東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策定を条件にプライム市場への移行を許可しました。しかし経過措置の期間は「当分の間」と曖昧で、いつまでプライム市場に残れるのかわかりません。また「自動的に移れるのか」「上場審査が再度必要なのか」といった詳細も不明確でした。
そこで東京証券取引所は2023年1月の上場規則改正時に、上場維持基準を下回る企業に対し、上場廃止予備軍である「監理銘柄」を経由して再度審査を受ける方法と、早々にプライム市場の上場維持を断念する特例の2つの選択肢を提案しました。
前者は、3月期決算企業の場合、2026年3月末時点で上場維持基準を満たしていなければ監理銘柄に指定され、最短で同年9月頃に上場廃止となります。一方、後者であれば、2023年4月から9月末の間に特例を使うことで、スタンダード市場に申請書の提出のみで移行できます。
現時点でも多くの企業が早々にプライム市場の上場維持を断念する特例を活用しており、今後も上場廃止のリスクを軽減するため、複数の企業が特例を用いる可能性があります。