九州矯正展とは?
九州矯正展とは、年に一度、福岡矯正管区、管内の主管刑事施設及び公益財団法人矯正協会刑務作業協力事業部が主催で開催されるイベントです。昭和57年に福岡刑務所で開催されたのが最初で、今回で九州矯正展は38回目を迎えます。
安くて品質の良い刑務所作業製品の販売を含め、地域の方々に矯正行政に関する取り組みを知ってもらうきっかけにしたり、理解を深めてもらうためのイベントです。
福岡矯正管区は、法務省矯正局の地方支分部局として、九州・沖縄地方に所在する矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院及び少年鑑別所)を管轄しています。(詳細は末尾を参照)
九州矯正展は、九州地方で最も開催規模が大きい矯正展と言っても過言ではありません。
九州矯正展の目的
九州矯正展は、法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の一役を担っているイベントです。
収容されている受刑者・少年の改善更生・社会復帰のため、矯正行政が果たしている役割や日々の教育活動、改善指導などを紹介。出所者などを地域で受け入れていたただくため、矯正行政に理解を深めてもらったり、出所者等の再犯防止につなげることを目的としています。
九州矯正展はどんな内容?
九州矯正展の開催場所は、グランメッセ熊本や福岡刑務所など転々としています。第38回九州矯正展は、福岡アイランドシティフォーラムで開催されました。
九州矯正展のことをまったく知らない方もいれば、家族が刑務所作業製品を使用していることから知っていたり、刑務所作業製品の販売のみのイベントには行ったことがある方もいると思います。
刑務所は普通に生活しているとほとんど関わりがない場所ですが、だからこそ地域の方々に興味を持っていただいたり、理解を深めていただけるように九州矯正展を開催しています。
<九州矯正展の内容>
- 矯正行政に関するパネル広報
- 性格検査
- ドキュメント「刑務官の1日」
- 刑務所作業製品の販売
- 刑務作業体験コーナー
革小物製作体験(有料)、紅型コースター製作体験(有料)、パッチワーク籠作り教室(無料)、紙飛行機折り方教室(無料) - ステージイベント
9/23日(土)
10:00~ 福岡県警察音楽隊による演奏
11:00~ 声優の“杜野まこ“さんのトークショー
13:00~ 常磐高等学校ダンス部
14:00~ TERIHAジュニアRGによるダンス
15:00~ daisy(デイジー)によるダンス
9/24日(日)
10:00~ 福岡市立香椎第1中学校吹奏楽部による演奏
11:00~ ワーサルチアリーディングチームAXEL
13:00~ 福岡工業大学附属城東高等学校吹奏楽部による演奏
14:00~ 福岡スクールオブミュージック高等専修学校によるダンス
では、九州矯正展の詳細について見ていきましょう。
2023年(令和5年度)の九州矯正展の様子
2023年9月23日(土)、24日(日)に開催された『第38回 九州矯正展』
新型コロナウイルスの影響もあって4年ぶりの開催となりました。福岡アイランドシティフォーラムの入口前には、開場前から来場者が行列をつくっていました。
2023年(令和5年度)の九州矯正展の来場者は、なんと5,629人だったそうです。過去数年の九州矯正展の平均が約7,000名であったことを考えると、4年ぶりの開催にも関わらず、非常に多くの方が来場したことが伺えます。
九州矯正展の初日にはテープカットが行われ、宇美町長、福岡地方検察庁検事正、九州地方更生保護委員会委員長、福岡矯正管区長、福岡刑務所長に加えて、トークショーのゲスト、声優の杜野まこさんが参加しました。その後、福岡県警察音楽隊による演奏で盛大に始まりました。
会場の入口では、横須賀刑務支所で製造されているブルースティックのミニ版が、先着200名様に粗品として配布されました。4年ぶりの開催とあって、訪れた来場者は期待に満ちて会場へと進んでいき、開場直後から大勢の人々で賑わっていました。
安くて良いもので有名な刑務所作業製品
九州の各刑務所からの刑務所作業製品が主に展示・販売されていました。
横須賀刑務支所のブルースティックや、函館刑務所のマル獄シリーズなど九州以外の刑務所作業製品も取り扱っていました。ブルースティックは、刑務所作業製品の中で特に人気が高く、両日完売となっていました。
来場者の方に話を伺うと、「安くて良いものが手に入るので来ました」という声が非常に多く、皆さん買い物を楽しんでいるようでした。
決済方法は現金だけではなく、クレジットカードやバーコード決済、電子マネー決済など多岐にわたって準備されていたことは、来場者にとっても嬉しい点ではないでしょうか。九州矯正展の来場者の年齢層は幅広いため、さまざまな決済方法により、刑務所作業製品がより多くの方の手に行き渡りやすくなっている印象を受けました。
文化祭のような盛り上がりを見せるステージ
音楽隊の演奏で賑やかになったステージ前には、音楽に引き寄せられるように人だかりができていました。その後も地元の学生によるダンスや演奏、幼稚園児たちのダンスなど次から次へとエンターテインメントが繰り広げられました。
ステージの演目は矯正広報や刑務所と関連しないように見えるかもしれませんが、その演目を見ることで、九州矯正展や刑務所の矯正広報を知るきっかけにもなります。きっかけが何であっても、地域の方々に「社会を明るくする運動」について理解を深めてもらうことが何より大事なのです。
性格検査テストで本当の自分に出会う
「性格検査コーナー」という体験ブースがあり、こちらもたくさんの人々に利用されていました。設問に答えることで、自身の性格の傾向を把握することができます。
60問の設問に対して「はい/いいえ」で回答します。家族や夫婦での参加者は、一緒に検査を体験して結果を見ることで、性格の傾向が改めてお互いにわかって盛り上がっていました。
家族で楽しめる刑務作業体験コーナー
九州矯正展では、パッチワーク籠作り教室、紙飛行機折り方教室、革小物製作体験、紅型コースター製作体験ブースも設けられ、特にお子さんを連れた家族に好評でした。実際に製作したものは持ち帰ることができ、九州矯正展での思い出の品や体験にもなります。
(製作作業に一生懸命になる子供たち。親も一緒になって体験できます)
「ちびっこ刑務官撮影」コーナーでは、刑務官の制服の試着体験ができます。その場で撮影した写真は缶バッチに加工され、独自の記念品として手に入れることができます。
実際に公道を走っている白バイの乗車体験も子供に人気のコーナーでした。
どちらの体験コーナーもここでしか撮影できないような写真が撮れるので、子供連れの家族が常に列を成していました。
声優・杜野まこさんのトークショーから学ぶ九州矯正展
ステージでは、声優として活躍する杜野まこさんをゲストに迎えて、トークショーが実施されました。
参考)杜野まこ
https://haikyo.co.jp/profile/profile.php?ActorID=13097
杜野まこさんが初めて全国矯正展を訪れたのは、約12年前の東京での開催だったそうです。受刑者によってつくられた製品のクオリティの高さや、展示パネルを通じて受刑者の生活や矯正の取り組みを学ぶ良い機会となったと振り返りました。
九州矯正展に対して杜野まこさんはどのようなイメージを持っていますか?という質問に対して、
「日常生活で”受刑者”というワードを使う機会は少なく、重みのある言葉だと感じました。今回、九州矯正展に訪れてみて矯正活動について理解を深めることができた反面、被害者の方がいることも考えるべき点だと思いました」
と普段なかなか考えることのないことに触れた機会のようです。
トークショーが始まる前に、杜野まこさんは会場内を見て周っていました。
「性格検査を体験しました。サクッと答えられる設問と悩む設問があって、その考える時間が自分と向き合う良い経験になりました。ぜひ皆さんも体験してみてください。
製品も多数展示されていましたが、価格の手頃さにびっくりしました。私は、革のお財布と一輪挿しの花瓶を購入しました。どの製品からもさまざまな印象を受けて、それが受刑者の心情を反映しているのではないかと感じ、記念として購入することに決めました」
刑務所作業製品の話の流れから、もし杜野まこさんが製品をつくるとしたらどのようなものをつくるかという話題になりました。
「その土地の景色や記憶に残っている景色は唯一無二のもの。自分の好きな景色や生まれ育った場所の景色からインスピレーションや、イメージが反映されるデザインも素敵だと思いました」
刑務所が存在する地域の特産品を活用した製品づくりが主流ですが、杜野まこさんのユニークな観点は関心を惹くものでした。
九州矯正展の概要や取り組みについて、福岡矯正管区の福田雅峰課長に伺いました。
「一般的には、“矯正”というと刑務所のイメージが浮かばないかもしれないし、受刑者には怖い人というイメージがあるかもしれません。でも更生に向けて頑張っている人もいれば、その裏側には新たな被害者を生まないために、二度と犯罪をしないように受刑者に指導や教育している刑務官をはじめたくさんの職員がいることも知っていただきたい。実際に、刑務所内にいるうちに受刑者に働く場所や住む場所を提案するような社会復帰に向けた支援も進められています。
北九州医療刑務所では、障がいを持つ受刑者や、知的・精神的な支援が必要な方を対象とした訓練が行われており、作業療法士の助言などを取り入れた刑務作業として陶器の製作が行われています」
トークショーも後半にさしかかり、罪を犯した人が立ち直るために大事なことについて杜野まこさんに伺いました。
「出所された方々には周囲の理解と協力が不可欠ですが、その方々の居場所を確保することも同様に重要なことです。居場所が多くあることで、もしどこかで失敗があっても他にも拠り所があると安心できるのではないでしょうか」
受刑者がその場にいる訳ではないのですが、トークショーでは受刑者に向けて伝えたいメッセージを杜野まこさんからいただきました。
「自身が犯した罪から目を背けることなく、一歩踏み出す勇気を持って欲しい。踏み出してからの戦いに歩んでいけるパワーを充電して欲しい。矯正展に来場してくれた方の想いも受刑者の方に受け取って欲しいと思います」
合わせて、九州矯正展へ来られた方々へのメッセージも杜野まこさんからいただきました。
「製品を手に取るだけではなく、製品の背景などもスタッフの方へ伺ってもらってお家に持って帰ってもらえたらと思います。九州矯正展を、皆さんの今後の人生の選択や生き方をも考えるきっかけにしていただき、周りの方へもお話してもらえれば嬉しいです」
トークショーを終えての感想を杜野まこさんに伺いました。
「普段のトークショーとは異なり、九州矯正展でのトークショーは勇気が必要でした。受刑者の方の更生を願う反面、被害者の方々がいらっしゃることも事実。双方の環境を想像してどうあるべきか、どのような言葉を発するかを考えてステージに立つ責任感を感じました。
受刑者が社会復帰できるよう願う気持ちがありますが、過去の罪について、どのような言葉をかければよいのかは複雑です。
だから直接会って顔を見て声を聞いて、どのような環境でどのような思いを持っているかをより知りたいと思いました。」
刑務所内で受刑者へ指導する作業専門官が語る想い
革製品の企画・指導の経験が11年目となる、福岡刑務所の河上作業専門官に、刑務作業を通じて感じることや製作現場について話を伺いました。
「刑務作業に従事する受刑者の年齢層は20代から70代までと幅広く、罪を犯して刑務所に入っている人なので、指導といっても一筋縄ではいかないですね。そんな人たちが、革製品の写真を見ただけで同じものを作ることができるようになることが理想です。
仕事のやり甲斐は、やはり『先生お世話になりました』という一言を聞くことですね。未経験から刑務作業を通じて技術が向上することや、出所してから社会に戻ってくれると嬉しいです。
今後の目標は、尊敬する作業専門官を超えることです。そして、仕事を通じて周りへ良い影響を与えていきたいです」
福岡刑務所などの矯正に関する取り組みについて
福岡刑務所をはじめ各刑務所で実施されている矯正広報に関して、パネルで学ぶことができるコーナーがありました。パネルには、受刑者の日常生活や食事、刑務所内での作業や矯正活動など、具体的な取り組みが細かく記載されていました。
会場内では再犯防止に関するアンケートを実施していました。国が推進する再犯防止推進計画の認知度や、犯罪を犯した人が社会に再び適応することができるかという観点からの設問を通じて、地域住民の意識や認識を把握するための調査でした。
コレワーク九州という就労支援を行っている機関も広報として出ていました。人手不足で悩んでいたり、社会貢献をしたい事業主の方向けに、刑務所出所者等を雇用するためのサポートをしてくれます。
九州矯正展を通じて地域住民に伝えたいこと
九州矯正展の主な目的は、収容されている受刑者や少年の改善更生・社会復帰を促進するため、矯正行政が果たしている役割や日々の教育活動・改善指導などを紹介することです。また、地域で出所者を受け入れる際の理解を深め、再犯防止につなげることです。
どんな形であれ、刑務所に触れる機会を設けて、そこから少しずつ矯正行政の理解を深めてもらうことが刑務所および矯正機関の願いです。
実際、九州矯正展の来場者にインタビューを実施したところ、以下のような反応が得られました。
「久しぶりに九州矯正展が開かれるので良い製品があるか見に来ました」
「近くに住んでいるので寄ってみました」
「息子・娘がステージに出演するので家族で来ました」
九州矯正展の主旨を理解している来場者はわずかで、地域住民として出所者の社会復帰を支援する意識の普及はまだ不十分であると感じました。このイベントを通じて、多くの地域住民が矯正行政の取り組みを理解し、その普及に賛同してもらえることを望んでいます。
福岡刑務所処遇部長の長屋さんに、九州矯正展を通じて伝えたいことを伺いました。
「犯罪の被害者の方のこと、犯罪に不安を感じている国民の皆さんのこと、受刑者に犯罪の責任を自覚してもらう環境を整える必要があることなどを考えれば、刑罰は厳粛に執行する必要があると考えています。同時に、受刑者の多くは、本人の資質や成育歴などの影響のため、遵法精神、協調性・共感性、勤労習慣・意欲が低い、規則的で健康的な生活習慣を身に付けていない、思考や認知の著しい偏りがあるなど、様々な問題を抱えていますので、受刑者が更生して、新たな犯罪の被害者を生じさせず、社会の安全安心を守っていくためには、受刑者に対する作業や指導を通じて、受刑者が抱える様々な問題を少しでも改善していくことも重要であると考えています。できるだけ多くの方に九州矯正展に来場していただき、刑事施設の職員が、刑罰の厳粛な執行と受刑者の更生という難しいバランスを図りながら、日々、奮闘しているということや、更生して社会復帰しようと努力している受刑者がいるということを知っていただき、関心を深めていただく機会になればと考えています」
福岡矯正管区とは?
福岡矯正管区は、法務省矯正局の地方支分部局として、九州・沖縄地方(福岡県、佐賀県、
(引用:福岡矯正管区)
長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)に所在する矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院及び少年鑑別所)を管轄し、これら施設の適切な管理運営を図るための指導・監督を主な業務としています。
また、矯正研修所の福岡支所も同庁舎内に設置されており、矯正施設に勤務する職員(刑務官、法務教官等)に対する様々な研修が行われています。
福岡矯正管区の所在地
福岡矯正管区の最寄駅はJR千早駅で、駅から徒歩10分弱の場所。JR千早駅はJR博多駅から電車で8分の場所なので、割と都心部に近い位置にあります。
福岡矯正管区の沿革
福岡矯正管区が今の新庁舎に落成してから70年以上が経過しており、歴史を感じます。
昭和20年8月 九州行刑管区本部として旧福岡刑務所内に設置される
昭和24年1月 福岡矯正保護管区と改称、少年施設を含む専任管区長が置かれる
昭和24年1月 福岡市中央区舞鶴の更生保護委員会庁舎に同居
昭和25年5月 福岡市中央区長浜に新庁舎落成
昭和27年8月 福岡矯正管区に改称
昭和47年4月 福岡市東区若宮5丁目3-53の現在地に新庁舎落成
昭和48年3月 福岡婦人補導院から所属替
平成22年3月 庁舎耐震工事完了(翌23年2月矯正研修所福岡支所研修寮耐震工事完了)
平成23年2月 矯正研修所福岡支所研修寮耐震工事完了
平成29年7月 福岡矯正管区駐車場等整備工事完成
福岡矯正管区の概要
所在地
〒813-0036
福岡県福岡市東区若宮5-3-53
アクセス
● 千早駅東口から徒歩8分
● JR 博多駅から3つ目の駅(JR 千早駅・快速停車)
● 福岡空港から 福岡市地下鉄で JR 博多駅へ
● 福岡インターから福岡方面へ福岡都市高速4号線
(下一般道)に沿って走り、松島交差点を右折する。
多々良中学校西交差点を右折する。
電話 092-661-1137(福岡矯正管区代表)
FAX 092-663-1001
福岡矯正管区フロントページ
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei08_00110#midashi5
【告知】2023年度(令和5年度)第63回全国矯正展について
2023年(令和5年)の全国矯正展は大幅な見直しを行い、会場を昭和47年より使用している科学技術館から東京国際フォーラムに変更するとともに、開催時期を例年の6月頃から12月に移行したうえで実施予定です。
【開催日時】
2023年(令和5年)12月9日(土)10:00〜16:30
2023年(令和5年)12月10日(日)9:30〜15:00
【開催場所】
東京国際フォーラム(ホールE)
東京都千代田区丸の内三丁目5番1号
こちらも九州矯正展同様、矯正行政の取り組みを一般市民に伝える貴重なイベントです。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
第63回全国矯正展についての詳細はこちら↓
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00033.html
また、令和5年(2023年)11月3日(金)には、府中刑務所でも文化祭が開催されます。
こちらも、刑務所作業製品即売コーナーや刑務所内見学などの体験コーナーがありますので、ご興味のある方は足を運んでみてください。
第42回府中刑務所文化祭について詳細はこちら↓
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei08_00101.html