札幌医科大学とニプロ株式会社が共同で開発した世界初の脊髄損傷再生医療治療薬「ステミラック」が、2018年末に国から製造販売の承認を受けて5年が経過しました。この治療薬は全国で約150人の患者に保険診療として提供されており、寝たきりや手足の麻痺を抱える重症患者に新たな希望をもたらしています。
ステミラックは北海道・札幌で生まれた画期的な治療薬です。患者の骨髄液から採取した間葉系幹細胞を使い、傷ついた神経の再生や失った機能の改善を可能にします。治療の対象は損傷直後の重症患者で、損傷から1ヶ月以内に骨髄液を採取し、そこに含まれる細胞を2〜3週間で1万倍にまで増やして投与します。
点滴で投与された幹細胞は損傷部位に集まり、長期にわたって神経再生や機能改善を促します。この治療法の薬価は1,523万4,750円と高額ですが、保険適用により患者の自己負担は1〜3割で済み、高額療養制度でさらに負担額が軽減されます。
再生医療治療薬「ステミラック」の適応疾患および適格基準
札幌医科大学附属病院の公式サイトでは、ステミラックの適応疾患については「外傷性脊髄損傷で、ASIA機能障害尺度がA, BまたはCの方(重症の方)」と記載されています。
適格基準は「骨髄液の採取を、脊髄損傷受傷後31日以内を目安に実施できる方」であり、培養の準備のため、受傷後2週間以内を目安に転院が必要です。以下の項目に該当している場合は、ステミラックの治療を受けることが難しくなります。
- 本品の成分に対して過敏症の既往歴
- 悪性腫瘍の合併又は既往
- アレルギーの素因
- 感染症を合併
- 体重が低い方(特に小児)や貧血
- 全身状態が極めて不良(例:内分泌代謝疾患、循環器疾患、呼吸器系の 疾患、消化器系の疾患、重度の多発性外傷、多臓器障害等)
- 重度の頭蓋内病変、主要血管の高度狭窄、解離性大動脈瘤、強い動脈硬化性変化、重度の石灰化等を認める
- 重度の脊髄・脊椎疾患(骨粗鬆症、脊髄腫瘍、脊髄血管奇形、脊髄空洞症等)を認める
- 血圧を収縮期140 mmHg以下、拡張期90 mmHg以下にコントロールすることができない
- その他医師が不適切と判断した方
引用:脊髄損傷に対する再生医療等製品「ステミラック注」を用いた診療について|札幌医科大学附属病院
治療が行われる前には、適格性判断として詳細な全身スクリーニング検査が実施されます。投与に不適切と判断される併存症、合併症が認められた場合、ステミラックの治療は受けられません。
脊髄損傷を受傷し、ステミラックの治療を受けたい際には、入院している医療機関から紹介をしてもらう必要があります。その後、主治医からの診療情報を基に治療可能かどうかが事前に確認されます。