中央最低賃金審議会の小委員会は28日、2023年度の最低賃金の増額について議論を進めています。物価上昇を背景に、全国平均の時給が初の1,000円越えを見据える方向です。過去最大の引き上げ額にする方針で議論が進んでいます。
最低賃金は、企業が全従業員に支払う最低限の時給を規定し、労働者の最低限の生活保障を目指す制度です。これはすべての雇用形態に適用され、最低賃金法に基づき守られます。
最低賃金を下回る賃金を支払った企業には、50万円以下の罰金が科せられることとなります。最低賃金の改定は毎年7月に審議会が目安額を決定し、実際の反映は10月頃となります。
最低賃金引き上げによる主なメリットは、正規・非正規労働者間の所得格差を縮小できる点です。しかし、企業側にとっては人件費の増加という大きなデメリットが存在し、雇用や労働時間の縮小などが懸念されます。
議論の結果、最低賃金は1,002円になる見通し
27日に審議会が開催されましたが、意見がまとまらず28日まで延期しました。長時間の議論を重ねた結果、全国平均の時給を過去最大の41円引き上げ、1,002円という新たな最低賃金を設定しました。
岸田首相が早期に時給1,000円を目指していたことがわかり、審議会ではリーダーシップを示しています。「結果については歓迎したい。中小企業においてもしっかりと賃上げが行われるよう引き続き環境整備に向けて、政府一丸となって取り組んでいきたい」と岸田首相は述べています。
最低賃金が1,000円を超えるのは初めてですが、手放しで喜べる数字であるとは言えません。現在の全国加重平均の最低賃金は961円であり、今後1,002円になるということは41円、4.3%の上昇ということになります。
しかし、2023年度の消費者物価(生鮮食品除く)の上昇率は3.0%に達しており、これを引き上げ率から引くと、実質的な上昇はわずか1.3%となります。つまり、最低賃金が1,002円に上昇したとしても、物価上昇を考慮した実質的な引き上げ率で見ると、そこまで大きな数字にはならないのです。
実質の最低賃金の引き上げ率を見ると、2016年は3.43%、2017年は2.54%、2018年は2.17%、2019年は2.49%となっており、岸田首相になってからは2年連続で1%に留まっています。この1件に対してネット上では「1,002円になったところで意味ない」「実績として報道しないでほしい」などの意見があがっています。