イオンは2024年から、子供が最長1歳になるまでの育児休業を取る社員に対して、休業前の手取り額と同水準の収入を補償する革新的な制度を導入します。この制度は、収入減による不安が男性社員の育休取得の障壁となっている現状に対応するためのものです。
国の現行制度では、育休取得期間が180日間(6ヶ月間)までの場合は月給の67%が、それを超える休業では月給の半分が給付されるため、手取り額は実質約2割減少します。しかし、イオンの新制度では国からの給付金との差額を補い、休業前の税引き後の手取り額の100%を補償することで、この減少をカバーします。
2025年度からは国も手取り額の実質100%を補償する制度を開始する予定ですが、その期間は最大で28日のみとなっており、イオンの提供する補償期間はそれを大幅に上回ります。この取り組みは、グループ全体で約150社、対象となる社員数は全体で約5万人に及び、初年度の取得見込みは男女合わせて2,000人程度になるとのことです。
給与補償にかかるコストは数十億円にのぼる見込みで、男性の育児参加促進という社会的課題への前向きな取り組みとして注目されています。
日本政府、2025年度までに男性の育児休暇取得率50%を目指す
日本政府は、男性の育児休暇取得率を2025年度に50%、2030年度に85%にまで高める目標を掲げています。しかし、2022年度の状況を見ると、女性の取得率は80%に対して男性はわずか17%に留まり、イオンのような大企業でも女性はほぼ100%に対し、男性は15%という低い取得率が報告されています。
日本能率協会総合研究所によれば、収入の減少を理由に育児休暇を取得しない男性社員が約40%にのぼるとのことです。この課題に対応するため、米セールスフォース日本法人は2022年11月から、育児休業中の収入を基本給の100%に補償する制度を開始し、男性社員には法定以上の最大12週間の育休を提供しています。
この新制度の導入により、男性の育休取得率は以前の3倍以上に跳ね上がりました。メルカリでも、産休・育休を取得した社員への復職時一時金支給という形で支援を行った結果、男性の育休取得率は2023年6月期に91.4%、平均取得日数は80.5日に達しました。
しかし、育休取得を妨げる大きな要因として、職場の環境や上司の理解不足が挙げられています。約23%の社員が職場の雰囲気や上司の理解不足を理由に挙げており、これを解消するためには、職場での仕事の引き継ぎや相互支援の文化を形成することが重要とされています。