
現地時間で12月13日、米国のローレンスリバモア国立研究所(LLNL)の研究者たちが、制御環境下における核融合実験で初めて、投入した分を上回るエネルギー量を取り出せたと発表しました。クリーンエネルギーをほぼ無限に得られる可能性があるとして、いま世界中で注目を集めています。
核エネルギーの技術発展を目指す米国家核安全保障局(NNSA)のJill Hruby長官は、「われわれは今回、世界に大きな革命をもたらせるクリーンなエネルギー源の実現に向けた、最初の暫定的な一歩を踏み出した」と、記者会見で述べました。
その一方で複数の専門家は、核融合が一般家庭用の電力を供給できるようになるには、いくつもの課題があると指摘しています。
LLNLが発表した成果は数十年の研究にわたる集大成
LLNLの国立点火施設(NIF)は、長きにわたって核融合に関する研究を続けていますが、核融合実験のなかで1つの大きな壁に直面していました。それが今回の話題である、核融合を達成するために必要となるエネルギー量が、核融合で発生するエネルギー量を大きく上回っているというものです。
一部の専門家は、現在稼働している核融合炉ではエネルギー量を上回ることはできないとの意見を持っていましたが、NIFは研究や実験を重ね、少しずつ成果に近づけていました。
そして、LLNLの科学者らが発表した内容によると、12月5日に課題である大きな壁を解消したとのことです。これは画期的進歩の瞬間であり、数十年にわたる科学研究と地道な進歩による集大成だと言えます。
世界中の物理学者が今回の画期的進歩を絶賛している
今回発表された核融合に関する画期的進歩に対し、慣性核融合研究センターの共同ディレクターのジェレミー・チッテンデン氏は、「真の画期的進歩の瞬間が訪れた」と絶賛しました。世界中の物理学者も同じように、国際的な科学コミュニティーによる大仕事に称賛の声を送っています。
また、英オックスフォード大学のジャンルカ・グレゴリ物理学教授は、「今回、点火に成功したことで、核融合エネルギーが解放されただけでなく新しい科学への扉が開かれた」とコメント。
とはいえ、LLNL所長のブディル博士は、実用化に向けた使用については大きなハードルがあると回答しています。その反面、「努力の結集、投資、数十年の基礎技術の研究によって、発電所の建設が可能になるだろう」との意見も示しているので、これからの研究や発表に期待したいところです。