厚生労働省は20日、2023年度に公的年金を受け取り始める67歳以下の人の支給額を、前年度比2.2%増に改定すると発表しました。年金の支給額がプラスになるのは3年ぶりです。
すでに年金を受け取っている68歳以上の人については、支給額が前年度比1.9%増となります。度重なる物価や賃金の上昇を考慮し、将来世代の年金水準を確保するため、法律の規定で年金額の増額を抑制する「マクロ経済スライド」が発動されました。
厚生労働省の試算によれば、2023年度に受け取りを始める場合、自営業者らの国民年金は月額66,050円(前年度比1,434円増)となります。これは、保険料を40年間納めた満額支給の場合です。
また、厚生年金は夫婦2人の標準的な世帯で、月額224,482円(前年度比4,889円増)となります。年金の支給額が上昇することはポジティブなニュースのように思えますが、実は物価上昇分に追いついていないため、素直に喜ぶことはできません。
物価上昇分は2.5%で、年金の支給額が追いついていないことから、実質的には目減りしているのです。ネット上では、「支給額が増えても物価が上昇しているなら意味なくない?」「ちょっと悲しくなってきたな」「払った保険料の元取るだけでも大変そうだ」などの意見があがっています。
物価は2022年12月まで16ヶ月連続で上昇している
総務省が1月20日に発表した、2022年12月分の消費者物価指数によると、生鮮食品を除く総合指数は前年同月比で4.0%上昇しています。この物価の上昇は、2022年12月まで16ヶ月連続で起こりました。
また4.0%という伸び率は、消費税の導入時や税率引き上げ時を上回り、日銀の物価上昇目標である2%の2倍にまで達しています。伸び率が2%を超えるのは、消費税率を上げた2014年(2.6%)を除くと、1992年(2.2%)ぶりです。
さらに、帝国データバンクが発表した「食品主要 105 社」価格改定動向調査によれば、上場する主要飲食料品メーカー105社における、2022年の価格改定品目数は、最終的に20,822品目にまで及んだとされます。値上げ率平均は14%という結果でした。
なかでも、10月には約6,700品目の飲食料品が値上げされ、単月での値上げとしては異例の多さを記録しました。今回、年金の支給額が多少プラスになったところで、度重なる物価の上昇が相まって実質的に目減りしているのです。