
交流サイト(SNS)などで人の名誉や尊厳を傷つけたり、プライバシーを侵害したりする行為が問題となっています。投稿の削除を求めて裁判所に仮処分命令を申し立てる人もいますが、発令までに数ヶ月の期間を要することから、投稿が削除されるまでに被害が拡大し続けるという課題があります。
そこで、ネット上の誹謗中傷対策を議論する総務省の有識者会議は21日、問題のある投稿の迅速な削除に向けた手続きを創設する検討に入りました。裁判をしないでトラブルを速やかに解決する「裁判外紛争解決手続き(ADR)」の活用を例示したとのことで、有効性を会議で検討し、今夏を目処に報告書をまとめる方針です。
この日の会議では、「迅速な削除に特化した手続きの創設」を検討課題として取り上げ、一例としてADRを明記しました。
そもそもADRとは、裁判を行うことなく、法的なトラブルを解決する方法・手段の総称のことです。ADRの利用促進に関する法律では、「訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続」とされています。
裁判に比べて手続きが迅速であり、費用の抑制にも期待できるため、SNSなどにおける誹謗中傷関連の対策としては適切です。また手続きは非公開で行われるため、被害者のプライバシーの保護にもつながります。
ネット上ではADRの活用に対し、「投稿削除の前に投稿できる基準を厳しくしたほうが良い」「誹謗中傷と正当な批判を区別できるのだろうか」「確かに裁判するよりADRのほうが迅速に対処できそう」など、さまざまな意見が寄せられています。
誹謗中傷となる可能性が高いSNS投稿の具体例
誹謗中傷と正当な批判の区別・判断は難しいとされます。誹謗中傷となる可能性が高い投稿の基準としては、以下5つのポイントが挙げられます。
- 事実無根の書き込み
- 社会的評価を下げる書き込み
- 容姿を悪く言う書き込み
- 人格を否定する書き込み
- 悪質な口コミやレビューの書き込み
これらの投稿が、誹謗中傷にあたる可能性があるとされます。最近では、女子プロレスラーの木村花氏、女優の春名風花氏、お笑い芸人のスマイリーキクチ氏などが、悪質な投稿や誹謗中傷によって苦しめられてきました。
SNSに限った話ではありませんが、誹謗中傷は犯罪にあたる行為です。名誉毀損罪や侮辱罪、脅迫罪などの罪に該当する可能性があります。
今後、ADRを活用した誹謗中傷関連の対策が進めば、ネット上での被害削減に期待できるかもしれません。総務省の今後の動きに注目が集まります。