第80回ヴェネツィア国際映画祭 濱口監督の作品「悪は存在しない」が銀獅子賞を受賞
第80回ヴェネツィア国際映画祭の授賞式が9日夜にイタリアで開催され、濱口竜介監督の作品「悪は存在しない」が注目を集め、銀獅子賞(審査員大賞)に選ばれました。濱口竜介監督はカンヌやベルリンの映画祭、さらに米アカデミー賞でも過去に受賞経験があります。
世界三大映画祭のコンペティション部門とアカデミー賞のすべてで受賞するのは、日本人としては黒沢明監督以来の偉業となります。今回受賞した「悪は存在しない」は、音楽家・石橋英子氏からの映像制作の依頼を基に、濱口竜介監督が脚本を担当し制作した作品です。
受賞のスピーチでは、「この素晴らしい賞をいただけるとは、企画が始まったときにはまったく考えていなかった。発案者である石橋英子さんの音楽が、私を今まで体験したことがない仕事に導いてくれた」と、感謝の意を表明しました。
また、その後の取材でも「この映画はアートハウス系の映画でかつ非常に小規模のチームで作られました。小規模で自由に作った映画がこのように評価を受けるということは、映画制作の見方そのものを変えるきっかけになるのではないかとは思います」と語り、その上で「こうやって賞をいただくことも思ってもみなかった」と喜びを述べました。
濱口竜介監督とは?プロフィールや過去作品
濱口竜介監督は、東京大学文学部を卒業した後、映画の助監督やTV番組のADの職を経て、東京藝術大学大学院映像研究科に入学しました。在学中は黒沢清監督らのもとで学び、2008年には修了制作として発表された「PASSION」が、サン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスで注目を集めています。
その後、酒井耕監督との共同制作による「東北記録映画3部作」や、4時間を超える長編「親密さ」を手掛けるなど、その才能をさらに広げました。2015年には、自ら監督・脚本を務めた「ハッピーアワー」で、ロカルノ国際映画祭やナント国際映画祭など、数々の国際映画祭で賞を受賞。
さらに、2018年の商業映画デビュー作品「寝ても覚めても」は、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出されました。これにより、彼の名前は国際的にも知られるようになりました。
そして2021年には、村上春樹氏の短編小説を原作とした「ドライブ・マイ・カー」がカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本映画として初の脚本賞を獲得。同作はさらにゴールデングローブ賞非英語映画賞を受賞し、第94回アカデミー賞で作品賞にノミネートされたほか、合計4部門にノミネートされました。