子どもが朝食を摂ることの重要性 学力・学習習慣や体力との関係について

「子どもが朝食を摂ることの重要性 学力・学習習慣や体力との関係についてライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

突然ですが、みなさんきちんと「朝食」を摂っていますか?

  • なかなか忙しくて朝食が摂れていない
  • 家庭環境の問題で朝食をきちんと食べられない
  • 朝食を摂る習慣がない

などご家庭によって、朝食の位置づけはさまざまでしょう。

しかし、朝食はみなさんの想像以上にさまざまなメリットがあるのです。
しかも、朝食は大切な「ポイント」を守ることで、もっと有意義なものになります。
いったいそれは何でしょうか?

早速、朝食と健康の関係についてみていきましょう。

朝食は学力・学習習慣や体力と関係している

多くの方は「朝食は単なる3食の中の1食」と考えていますが、そうではありません。

朝食は健康習慣を作る土台といえます。

例えば、農林水産省の発表した研究データによると、朝食と学力や体力の関係について以下のことがわかっています。

  • 中学2・3年生で朝食をほとんど毎日食べる子どもは、朝食を週に2〜3回食べる、あるいは朝食をほとんど食べない子どもと比べて、通信簿の平均点が高い。
  • 男女ともに、毎日朝食を食べる朝食摂取群で、標準BMIの者の割合が多かった。
  • 朝食をよく食べる者の方が睡眠問題の出現割合が少なかった。
  • 小学生〜成人を対象とした研究では、体力測定の結果がよい。

このことからも、朝食は1日の始まりを決め、健康習慣の根幹でもあることがわかります。

農林水産省のホームページには、文部科学省とスポーツ庁のデータとともに、以下が明記されています。

  • 毎日朝食を食べる子供ほど、学力調査の平均正答率が高い傾向
  • 毎日朝食を食べる子供ほど、全国体力調査の体力合計点が高い傾向
引用元:農林水産省. 家庭での食育の推進
文部科学省の「朝食の摂取と学力調査の平均正答率の関係」とスポーツ庁の「朝食の摂取と全国体力調査の体力合計点の関係」のグラフ
出典元:農林水産省. 家庭での食育の推進

自宅で食べる朝食が子どものメンタルに大切

では、なぜ朝食が学力や体力に大きく影響するのでしょうか。

結論からいうと、「朝食をとるかどうかは家庭状況そのものを表している」からです。
例えば、その背景として、以下のことがわかっています。

  • 朝食を毎日は食べない子どもは、朝食を毎日食べる子供と比べて、イライラ感が「いつもある」「よくある」「時々ある」と回答した者の割合が高い。(小学校2年生の男子の場合、約60%から80%に上昇)
  • いずれの学年でも、朝食を欠食する子どもほど起床時刻や就寝時刻が遅く、睡眠時間が短い。
  • 朝食を毎日食べる者の方が時々食べない者よりもストレス指標が有意に低い。
  • 朝食欠食回数が少ない者の方が、健康生活習慣行動の該当数が多い者が多い。

つまり、「朝食は睡眠や他の健康習慣・家庭環境などに密接に関わっている」ということですね。
朝食をきちんと摂れる家庭は、他の生活面でも優れている家庭であることが多いというわけです。

このような朝食と心理社会学的な行動の関係は、日本だけでなく海外の論文でも報告されています。

例えば、スペインに住む4歳から14歳の若者を対象とした研究では、朝食を家に食べることと比較して、

  • 朝食を抜くと3.29倍
  • 朝食を外に食べると2.06倍

心理社会学的に問題行動を起こしやすいことが言われています。このように文化的な背景が異なっていても、朝食は非常に大切な健康習慣の一つなのです。

(参照:農林水産省「朝食を毎日食べるとどんないいことがあるの?」
(参照:Breakfast and psychosocial behavioral problems in young population: The role of status, place, and habits. Front Nutr. 2022 Aug 23;9:871238

朝食の効果をより上昇させる大切な「ポイント」は?

実は、朝食の効果をよりアップさせる大切なポイントがあります。

それは「家族と一緒に」朝食をとること。

実際「家族と一緒に朝食をとる」ことの有用性について、17の研究をまとめた182,836 人の子どもと青年(年齢層: 2.8〜 17.3 歳)を対象とした論文があります。

その報告によると、週3回以上家族で食事をする子供は、週3回未満の子どもを比較して、

  • 太り過ぎになる確率が12%減少
  • 不健康な食べ物を食べる頻度が20%減少
  • 摂食障害に関与する可能性が35%減少

といった効果が実証されました。

もちろん、朝食自体も1日のスタートを決めるのに大切ですが、「どこで」「誰と」食べるかも同じくらい重要であるといえますね。
(参照:Is Frequency of Shared Family Meals Related to the Nutritional Health of Children and Adolescents? Pediatrics. 2011 Jun;127(6):e1565-74

家族との朝食は健康への第一歩

このように、朝食は単なる「栄養補給」ではありません。

朝食には、学力・体力・心理社会面での向上や他の健康習慣の獲得に至るまで、さまざまな健康パワーが秘められています。

さらに、家の中で家族と一緒に食べることで、より朝食の健康効果が高められます。
日々をより健康に過ごしたいと思われるなら、まずは朝食から見直してみましょう!
きっとよりよい毎日を過ごすことができるようになりますよ。

秋谷進医師

投稿者プロフィール

東京西徳洲会病院小児医療センター

1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。

金沢医科大学研修医、2001年、国立小児病院小児神経科、2004年6月、獨協医科大学越谷病院小児科、2016年、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科を経て、2020年5月から現職。
専門は小児神経学、児童精神科学。

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