米国の情報サービスサイトBloomberg(ブルームバーグ)は、オンライン小売り最大手の米Amazonが、年間10億ドル(約1,400億円)強を投じて12〜15本の劇場映画を公開していく予定だと報じました。インターネット企業としては、過去最大の劇場向け映画投資計画だとされています。
Amazonは2022年3月17日(現地時間)に、「007」シリーズや「ロッキー」などで知られる米映画製作会社MGMの買収が完了したと発表しました。買収総額は84億5,000万ドル(約9,200億円)にまでのぼりましたが、買収後に目立った動きは見られていませんでした。
ブルームバーグによると、Amazonは年間で10億ドルを投じ、劇場公開用の映画製作を積極的に進めていくとのことです。また、匿名を条件に話した同関係者によれば、戦略はまだ最終的な調整の段階にあるとして、Amazonは来年から少しずつ本数を増やし、最終的に年間12〜15本の劇場公開を目指すとされています。
米興行界において、Netflixやディズニープラスなどのストリーミングサービス各社は、これまで制作した作品の大半を劇場公開せず、ストリーミング配信に注力していました。その一方で、Amazonは劇場公開にオープンな姿勢を示したことから、市場やユーザーに好印象を持たれています。
このニュースを見たネット上のユーザーは、「AmazonはMGMを活用して映画をたくさん作って欲しい」「劇場作品が増えるのは嬉しい限りだ」などのコメントを寄せています。
AmazonとNetflixにおける作品数の違い
ストリーミングサービス最大手のNetflixは、年間でオリジナルムービーを100本近く公開しています。Netflixの作品数に対し、Amazonは年間で20〜30本しか公開していません。また、Amazon作品の多くが英語以外の言語であるなど、両サービスを比較した場合、その差は顕著にあらわれています。
しかし、ストリーミングサービス各社がストリーミング配信に力を入れていることは、映画館チェーンにとって大打撃になっていることからも、一部批判的な意見が集まっています。
今回のニュースを見たブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ギーサ・ランガナサン氏は「年間12〜15本の映画製作に10億ドルを投じるアマゾンの計画は、劇場モデルへの信任投票だ」と指摘した上で、「ユニバーサルとワーナーの予算もほぼ同水準であることから、劇場興行収入を楽に15〜20%押し上げる」可能性があることを分析しました。
また、このニュースを受けて、シネマークやAMCシアターズ、IMAXなど、映画館運営会社の株価が上昇しました。