東京地裁は18日、KADOKAWA、集英社、小学館の3大出版社が、かつて日本最大の海賊版サイト「漫画村」の元運営者に対して提起した約19億3,000万円の損害賠償請求訴訟で判決を下しました。この判決で、元運営者には約17億3,000万円の支払いが命じられました。
漫画村は多数の漫画が無断で掲載され、月間1億回近いアクセスがあったことから、著作権侵害による推定被害額は約3,200億円とされています。元運営者は著作権法違反などの罪で実刑判決を受け、現在再審を請求中です。
裁判長の杉浦正樹氏は、元運営者が『ケロロ軍曹』『ONE PIECE』『YAWARA!』など17作品を、3社の許諾を得ずに無断でサイトに掲載したことを認定しました。これに対し、元運営者は「自分に財産がないためお金を取ることはできず、パフォーマンス的な側面の強い裁判」「判決には納得していない」と反論しています。
集英社の伊東敦・編集総務部参与は、記者会見で「権利侵害に対する大きな抑止となり、海賊版問題を広く訴える契機になった」と述べ、海賊版サイト対策のさらなる強化を宣言しました。出版業界は海賊版との戦いを継続していく構えです。
ネット上では、「払う財力があろうがなかろうが、こうした賠償金命令はほぼ任意に等しい」「民事裁判での賠償が強制ではないのであれば、何のための裁判なのかといつも思う」「裁判で負けても納得行かないから一切支払うつもりはないって、偉そうに言ってる姿に腹立たしさを感じます」などの意見が寄せられています。
海賊版サイト「漫画村」とは?2018年4月に閉鎖
かつて「漫画村」と呼ばれた海賊版サイトは、著者や出版社の許可なく約7万冊の人気漫画をインターネット上に掲載し、2018年4月に閉鎖されるまで大きな問題となりました。誰でも無料で漫画を読むことができ、閉鎖前の月には1億回近いアクセスを記録しました。
コンテンツ海外流通促進機構(CODA)による試算では、その被害額は約3,200億円にのぼります。政府はこの問題を受けて、知的財産戦略本部などで具体的な対策を検討し始めました。漫画村の閉鎖後も、海外を拠点とする類似の海賊版サイトが乱立し、被害はさらに拡大しています。
一般社団法人ABJによると、海賊版サイトの月間アクセス数は増加傾向にあり、2021年10月には初めて4億アクセスを超えたとのことです。その年の被害額は1兆19億円に上り、正規の漫画市場の規模を大きく上回っています。
一般社団法人ABJの広報部会長である伊東敦氏は、「海外を拠点とする海賊版サイトについても引き続き積極的に対応するとともに、海外のユーザーなどへの啓発も力を入れていきたい」と述べています。