インターネット上の偽情報対策として、政府は大手SNS事業者などに対し、広告掲載の事前審査基準の公表を義務づける方針を固めました。
特に著名人になりすました「なりすまし広告」が問題視されており、米国の大手IT企業Metaなどの大規模事業者が対象となります。法整備も視野に入れた取り組みになるとのことです。
5月30日に開かれた総務省の有識者会議では、傘下の作業チームが今後の論点を提示しました。広告市場の透明化を重点項目に掲げ、事前審査基準の公表義務化などを盛り込みました。
各社は社内規定で不適切な広告を禁じていますが、一部の偽広告は野放しの状態が続いています。総務省の有識者会議でも、プラットフォーム側の管理が不十分との指摘が上がっていました。
論点整理では、日本語や日本の文化、法令に精通した人材の配置や、AI審査の実効性の説明なども事業者に求めていく方針です。対象は一定の要件を満たす大規模事業者に絞られる見通しで、インプレッション数やアクティブユーザー数などを基準とする案が示される予定です。
ネット広告の健全化に向け、政府の取り組みが本格化しています。ネット上では、「偽広告は本当にどうにかしてほしい」「騙されそうで怖い」「他のプラットフォームも対象にしてほしい」などの意見が寄せられています。
掲載停止基準の策定・公表や運用状況の公開も求める方針
SNSや検索サービスを提供する大手プラットフォーム事業者のネット広告市場における存在感が強まっています。公正取引委員会によると、Googleは「検索連動型広告」で国内シェアの70〜80%を占め、Metaは自社サイトの広告枠を直接販売する「ディスプレー型」広告で10〜20%のシェアを持っています。
政府は違法広告への対策として、掲載停止基準の策定・公表や運用状況の公開を事業者に求める方針です。ネット広告の審査では、今国会で成立したプロバイダ責任制限法の再改正も選択肢に挙がっています。
ネット広告規制で先行するEUにおいては、デジタルサービス法(DSA)でオンライン広告の透明性向上を義務付け、関連する行動規範では広告の審査プロセス厳格化などを求めています。自民党の提言でも、プロバイダ責任制限法について「DSAとの比較により不足している、広告についての透明性への対応」の検討を求めていました。
政府は6月の骨太方針にこれらの検討内容を反映させる方針で、総務省の有識者会議は今夏までに具体的な法整備のあり方を取りまとめる予定です。健全なネット広告環境の実現に向けた動きが加速しそうです。