役員報酬が同業他社よりも高額だったとして国税当局と裁判 月2.5億円の役員報酬

関西を拠点とする味噌会社のグループ企業「京醍醐味噌」と、国税当局が裁判などで揉めています。役員報酬が同業他社よりも高額である、という理由で経費計上を認めなかった国税当局に対し、取り消しを求めて東京地裁に訴えました。

国税当局は2018年、京醍醐味噌の税務調査を行った結果、2013年〜2016年の4年間、代表である松井健一氏とその弟に支払われた役員報酬21億5,100万円のうち、およそ18億3,956万円分を「不相当に高額」だと指摘。

約3億8,500万円が課税処分となり、それを受けた松井健一氏らは東京地裁に訴えましたが、2023年3月に棄却され、国税当局の処分は妥当とする判決が下りました。松井健一氏らは「海外の販路開拓や利益率の改善といった役員の働きに見合った適正な報酬だった」と主張しました。

この裁判で焦点となったのは、同業者と役員報酬額を比べることの妥当性であり、ビジネスモデルが多様化する現代に至っては、今回の判決について疑問視する声も出ています。

5月27日に弁護士ドットコムニュースで配信された記事では、山下清兵衛弁護士が「国税当局がなぜ問題視するのか、理解しにくい」と発言しています。一方でネット上では「国税当局が役員報酬が高いと指摘することは無い。そんな権限は国税当局には無い」「日本の税金を逃れるためにやってることだと指摘されるから課税が来ただけ」など、賛否の意見があがっています。

山下清兵衛弁護士「国は役員報酬が過大か否かを決めるべきではない」

「国は役員報酬が過大か否かを決めるべきではない」と強く語るのは、今回の判決についてコメントを述べている田代浩誠弁護士です。今回の裁判のポイントは「大成功している経営者の足を引っ張る課税を国税がしているのはけしからん」と「法人税法34条2項について」の2点であると語っています。

松井健一氏は食品分野に独自の「ファブレス事業」を持ち込み、大きな利益を上げているからこそ、高額の役員報酬を支払えているのだと説明しています。また、田代浩誠弁護士によれば、今回のような高額役員報酬だと法人税の割合よりも所得課税の割合のほうが高くなり、それに対して国税当局が「不相当に高額」と否認しても無意味であるとのことです。

その上で、「確かに役員給与のうち『不相当に高額な部分の金額』は、損金に認めないとしています」と述べており、続けて「ただ、これは実働のない人の役員給与を否認する規定だと読むべき」と強調しています。

その点、今回の例では松井健一氏は実働しており、条文は「抜いてはいけない『伝家の宝刀』」とするのが適当であるとコメント。そして「国は役員報酬が過大か否かを決めるべきではない」と断定しています。

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